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マリネしたマジックマッシュルーム
【痴漢/痴女 官能小説】

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5.-6

「そ、そんなっ……、わ、わたし、そんなんじゃ……、ありませ……」
「あ? 何言ってんだ、お前。もっかい言ってみろよっ!?」
 口調を変えて椅子を蹴った彩希と一緒に由香里も立ち上がり、二の腕を取った。
「……姉ちゃん、俺たち付き合ってるんだ。姉ちゃんに何言われたって別れない。俺、真理子のこと好きなんだ。姉ちゃんこそ、変なこと言って邪魔すんなよ」
 彩希に向かって康介が強い口調で言った。由香里の手の中の彩希の腕がブルブルと震え始める。
「……康介くん、その子連れて行って?」
 血走った目でクルッと彩希が由香里の方を振り返り、アフロへ掴み掛かろうとしてきた。だが由香里はそうなろうことは予想済みだったので、容易に手首を捉えて阻止することができた。
「ユッコ、離して……。離せよっ!!」
 彩希が激しく腕を捩って振り払おうとするのを、由香里は力の限り抑えて、
「ほら、康介くん」
「いや、でも……」
「……早く消えろって!!」
 声を荒げると、康介は真理子を立たせ、泣きじゃくる彼女に寄り添いながら店を出て行った。由香里を振り切って追いかけようとしていた彩希だったが、由香里は決して腕を離さなかった。もう追いかけても追いつけない時分になって彩希は項垂れ、
「なに……? なんなの? あの子……」
 瞳からボロボロと涙をこぼしてテーブルに突っ伏した。
 帰りの電車に乗っても、まだ彩希は現実を受け入れられていないだけだった。
「……あんたも聞いたろ? 康介くん、あの子のことが好きだって言ったよ?」
「そんなの、あの子に言わされてるに決まってる」
「サキ……。私なんかよかさ、お姉ちゃんのあんたのほうが康介くんが本気で言ってんのかどうか分かるだろ?」
「……、でも……、でもさぁ……」
 彩希は涙声で鼻を啜り、「まだ東京きて一ヶ月やそこらだよ? あの子と付き合い始めたって、四月になってから一週間も経ってないじゃん……。何で……?」
 彩希が心の中で育んできたほど、康介は姉を想ってはいなかったということだ。だが……。
「……たしかに康介くん、最悪だよ。今日で私、あの子のこと嫌いになった」
「……」
 バーベキューに行った時、不意にキスしてやったら真っ赤になって驚いていた。純情そのものだった。いかにも純朴な美少年が歳を重ねた高校生になっていたが、実の姉である彩希に手コキをさせておきながら、東京に来て何もしがらみもなく付き合えそうな女が現れたらそっちに走ってしまった。気持ちも理屈もわかる。だが彩希は自分の親友だから到底許せなかった。
「……彩希。もう忘れな? 自分の友達があんな子と付き合ってほしくない」
「でも……、そんなの無理だよ」
「無理じゃないよ」
 由香里は彩希の金髪に唇を押し付けた。「あんたカワイイもん。だいたいの男は落とせる」
「……康ちゃんじゃなきゃやだ」
「あんな高校生なんかよりイイ男なんていっぱいいるよ」
 正直、康介レベルに整った男はそうそういない。由香里の周辺にいる男を紹介しようにも、彼らでは太刀打ちできない。しかし、月並みな言葉だが、「……男は顔じゃないじゃん?」
「初めてヤる相手は康ちゃんて決めてる」
 乗客はまばらとはいえ、正面のオバチャンが彩希の発言に眉間を寄せた。ま、親友のためだ。しばらく東西線には乗らない覚悟を決めよう。
「康ちゃんより上手い相手はいくらでもいるよ。てか、童貞少年にあんま期待すんな」
「……楽になれるの?」
「まー、他の女に走った弟待ってるよりかは楽だろうね」
「そっか……」
 ショックが大きかっただけに、真摯に言い諭したことで、彩希にしては珍しくしっかりと伝わったのかもしれない。ファーストフード店からずっと号泣していた彩希が上げた顔は、涙に腫れた酷いものだったが、新たな哀涙は流れていなかった。まだ消沈していることは確かだが、何となく、前向きさが顔色に宿ったように見える。
 ――しかし由香里の所感は誤っていた。家に帰り化粧も落とさず、風呂にも入らずソファに丸まった彩希の背中を見て、今日だけは思い切り泣き晴らせばいいや、明日から心機一転頑張んなさいと思って、特に声をかけずに由香里も支度を整えて眠ってしまった。早朝目が覚めると、競技場に着て行っていた衣装を残し、彩希は部屋にいなかった。





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