世界で一番…?-1
「なくなったら一番困るものねぇ?」
「はい」
「わかんねぇよ」
「じゃあ一週間後またここで答え待ってますから」
「はっ?」
「ではまた」
「おいおい、まじかよ」
今、考えるとなんでこんなの受けちまったんだろうと思う。
あなたが一番なくなったら困るもの、そんなのわかんねぇよ。
♪♪♪♪♪♪♪
♪♪♪♪♪♪♪♪
ピッ
「もしもし、なんだ久しぶりだな。あっ?今から?別にいいけどよ。じゃあ××公園でな」
大学時代の後輩から電話が掛かってきたことすら、かなり珍しいことだった。
他の奴らならまだわかるが、そいつはたまたま大学サークルで知り合った一つ下の後輩。やけに堅物な奴で、俺のくだらねぇギャグを鼻で笑うような奴だった。
サークルがなきゃ絶対係わりあうことがなかったそいつは、その後大学院に行って政界に入ったなんて風の噂に聞いて「すげぇな」なんて話をしたばっかりの時だった。そいつから呼び出されたのは。
「すいません、遅くに」
「いや別に気にすんな、吸うか?」
「いや、大丈夫です」
住宅街の中にある公園は街灯も消され、真っ暗だった。煙草の火と携帯の光、そして月の光がぼんやりと後輩の乗った高そうな車を判別させる。
「どうだ?最近」
「えぇ、まあ。で本題なんですけど」
俺の会話への気遣い無視かよ。なーんて事は言わなかったけど、そいつの表情はいつもと変わらず真面目顔で何を言われるんだと身構えてしまった。
「こんなこと先輩にしか聞けなくて、先輩が世界で一番なくなったら困るものってなんですか?」
ツッコミどころは多々あった。俺にしか聞けないって俺の立場ってお前の中でどんなんだよ。
けどそれより最優先引っ掛かる言葉が一つ。
「はぁあああ!?」
それ聞く為かよ、とかなんだよその質問、とか言いたいことが詰まった俺の叫び声は、近所迷惑よろしくっていうくらい響いた。
「叫びたいのは俺もですよ…実は」
後輩が仰る通りです、みたいな顔しながらした説明はこうだった。
大学院を出て2年、後輩が着いた職は親のコネクションを使って、議員の秘書。
忙しいなりにも充実した生活をしていた後輩に、議員の悪魔の声(後輩曰く)が囁いた。