世界で一番…?-2
「世界で一番なくなったら困るものって調べてきて」
初めは内心俺と同じ心境だったけど、議員の顔は大真面目。
今度提出する議案で必要なんだよね、なんたらかんたら。衝撃であんま憶えてないけどそんな事を言っていたそうな。
「で、なんで俺に聞くわけ?」
「先輩だから聞くんすよ」
名誉だか不名誉な選ばれ方をした俺は勿論。
「んなもん知るか」
「そこをなんとか!」
…と冒頭の会話をして今に至る。
「世界で、一番、なくなったら、困る、もの」
帰路についた俺は、反芻するようにじっくりとその言葉を飲み込んだ。
考えたことはなかった。そんなもの。
酸素
水
大地
まずは浮かんだものから挙げていくも、なんだか物足りない気がして目を瞑り考える。
電気
火
石油
目を開けて部屋を見渡せば、挙げれば限りがないくらい出てくる。
そう、出てくるのだ。
なのに後輩と議員は周りの人達に聞かず、俺に聞いた。
「なんか裏があんのか…?」
疑い出すと止まらない。どうしたものか、と唸る俺は元来の飽き性の所為かすぐに疑うのをやめた。とりあえず、今俺のやることは。
俺のなくなったら困るものを見つけること!
風呂
布団
家…?
それからの俺は、馬鹿みたいに考えた。考え過ぎて知恵熱出しそうなくらい。
周りの人間
友情
愛じ…ょ……う
「あー、もうちげぇよ、なんか違う」
ガチャンッ!
ライターがテーブルに当たり煩いくらいの音を立てた所で俺はやっと落ち着いた。焦っている…いや、焦るのも仕方がない。だって今日は
「一週間、どうでしたか?いい答え出ましたか?」
俺の焦りを知ってか知らずが、後輩は飄々とした様子で公園に現れた。
「…別に」
内心かなり不貞腐れながら、俺は心の中で愚痴る。
第一、そんな簡単に決まるわけねぇだろ!と。
「お前はどうなんだよ」
「俺ですか?」
「そう、お前のなくなったら困るの」
ヤケクソ擬いの急な俺の質問に後輩はうーん、と声を零した後、あっ!と後ろで豆電球が光ってそうな閃いた声を出した。