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『即席結婚パック』
【その他 官能小説】

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『即席結婚パック(前編)』-1

あの時私は失恋のショックでどうかしていたんだ…でなきゃ即席結婚パックなんて申し込むわけがない!

失恋旅行に行こうと駅でパンフレットの山を見ていたら一つの見出しに目を奪われてしまった。
『即席結婚パック!!出会いが欲しい!結婚したい!そんなあなたに…お見合い+挙式・スイートルーム宿泊+ハネムーンのすべてが10万円!!追加料金無し!!』
結婚てそんな簡単なものなの???哲(てつ)とずっと夢みてた結婚、ところがある日私は結婚どころか彼氏さえなくしてしまった…気付くと私はパンフを持って帰って、記載のアドレスにアクセスして必要事項を入力し勢いで『送信』をクリックした後だった。
すぐ登録完了メールが届くのはわかるけど『お見合い・日時のお知らせ』がものの10分で届くのはどういうわけだ!!
だまされてるのか?と思いつつ翌日私は髮を巻いてワンピースを着て会場のホテルに向かった。
最近できたこのホテルの式場オープンキャンペーンとしてこの企画は行われているらしい。今日これから会う相手と私は選択の余地なく結婚する。10万円で料理からドレスから用意するには相手についてまで私の注文をきいていられないのだ。
12階のフレンチレストランの奥の個室に通されると眼鏡をかけたコーディネーターらしき女性となぜか制服姿の男の子がいた。
「森薗毅(もりぞのつよし)都立東高3年です。」足を組んでだらしない姿勢で彼は言った。
高校生…バイトなの?私は椅子じゃなくてカーペットに座りこみたくなった。「まあ星島さん座って、18歳ですから法的に問題ないですよ」コーディネーターはニッコリとして私を椅子に座らせた。
「星島実結(ほしじまみゆ)、21歳。事務やってます…」私が自己紹介したのを見届けるとコーディネーターは後はお二人で…と言わんばかりに消えてしまった。
高校生はオードブルだというのにパンを三つも食べている。食べ盛りなのか、足元にはバスケ部のボストンバッグがあった。
頭を抱えながらあたしはきいた。「貴方、高校生なのに結婚する気?申し込みはしないよね?これバイトなの?」高校生はスープを飲み終えて言った。「あんただって21なら別に焦って結婚しなくたっていいだろ」もっともなことを言う。この年頃は理屈っぽく残酷なことを指摘してしまうのだ。「歳なんてすぐとっちゃうのよ!!」
ヤバイ 涙目になりそう。これじゃどっちが子供かわからない。高校生は不思議そうに私を見ていた。

二時間足らずの会食のあとブライダルコーナーで今後の流れについて説明された。明日の午前両家顔合わせ、午後から挙式、夜は宿泊して翌日ハネムーン出立。親や友人は呼べたら呼んで足りない分はサクラを用意してくれるらしい。私はこれからブライダルエステを行うそうだ。
イオンスチーマー・ピーリング・シェービング、採寸とヘアスタイリング、ビキニラインのケアまでされたのにはびっくりした。つまりは本当にあの子とセックスするってことなのか。なんだか憂鬱になってきた。
明日から必要な書類をもらって外に出るともう夕方だった。門の手前にあの高校生が立っていた。
「話そうと思って、結婚すんだし。」…頭が痛くなってきた。
彼はマックシェイクを啜りながら私の書類の紙袋を持ってホテルの中庭を歩き出した。私がエステを受けてる間に彼はマック…きっと女より料金は安いんだろう。「なんで申し込んだの?」私がきくと「春休みだから免許とろうと思って金ためといたんだけど教習所でガッコの許可がないからって断られて、でヒマで金余ったから…」思わず吹き出した。
「あんだよ。あんたはなんでだよ。」「べつにーあたしもヒマだったからかなー」少しあったかい気持ちになって歩きだした。
「彼女は?」「彼女いたら申し込まねぇだろフツー」「何人くらい付き合っことある?」あえて子供っぽいことをきいてみた。「えっと三人かな」「!(あたしより多い!ガキのくせして…)」「おねーさんは?」「…ひとりよ…」「そっかふられたんだな!」「悪い?部屋に行ったら風呂上がりの女がでてきたのよ!」
どうして正直に言ってしまったのか。おとなげない自分を恥じた。「…ひでぇなソイツ。まーオレと結婚すんだし、いんじゃねぇ?」毅は紙袋を返してバス停にかけていった。


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