セックスの意味-2
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光り射し込む明るいフローリングの部屋の真ん中にある、大きなベッド。
そこに田所さんがやや緊張した面持ちで腰を掛けていた。
徐々にアップになっていく彼女は、メイクも直して万全な状態。
艶のある肌、色白な肌に映えるピンクのチーク、柔らかな目元に仕上がったナチュラルなアイメイク。
本当にアイドルのPVみたいで、腕組みをしながらディスプレイを眺める目尻が緩んでしまう。
そして、少し遅れてツトムくんが現れる。
男だからほとんどメイクをしないけど、この子もまたレベルが高い容姿だと、改めて思う。
「本当、美男美女カップルですよね」
トレイを胸に抱いたまま、感嘆のため息と共に傳田が呟く。
「田所さんの緊張したような顔もいいけど、ツトムくんのはにかみながら恐る恐る彼女の頬に触れる仕草も、ぎこちなくてかえっていいな」
画面には、ツトムくんが現れたことでゆっくり立ち上がる彼女が、緊張しつつも微笑んでいて、その初々しい姿が実にたまらない。
恐る恐るツトムくんの身体に腕を回し、彼を見つめては照れ笑いする田所さん。
そんな彼女に、コツンとおでこをくっつけたり、耳に髪をかけてあげたりと、控えめな愛撫を繰り返していたツトムくんだったが、やがて彼女の唇に自分のそれをゆっくり重ねた。
ついばむようなキスを繰り返しては、微笑んで、また軽いキスを重ねて。
静まり返った部屋に、彼らのキスの音が控えめに響いた。
「まるで映画のワンシーンみたいですね」
「ああ、この二人はカメラ映えする容姿だから絵になるんだ。だから演技するよりも、自然体でいた方がいいと思って、余計な台詞とかは一切入れないことにしたんだ」
演出のため、お客様に演技指導をすることはしばしばある。
よりエロいのを撮りたい場合は、それ用に。
ドラマ仕立てにしたい場合は、それ用に。
ある程度の演技は、見せ場を作るための必要なプロセスだが、この二人については演技指導はすることはなかった。
初体験で、そんな余裕はないだろうし、ツトムくんには、女を抱くときの心構えのみ叩き込むことが何より大事だと思ったから。