3.-6
「で……?」
問いかけつつ、また手首の出力を上げていく。
「ううっ……」
「康ちゃん、なーに? 『で……』?」
彩希がヒップを下ろしている太ももの筋肉が何度も収縮していた。彩希はもう一方の手も根元の辺りに添え、縦に積んだ拳の中で切羽詰まった肉幹を搾った。呻いた康介が再び両手を顔に置く。だが塞いだのは口ではなく瞼だった。その下に覗いた唇が声にならずに「で」と「る」の形を作ると、あまりのいじらしさに、しゃがんだ格好で大胆に開いていた脚の間でショーツの両側から蜜が夥しく垂れた。
「んー……、……あっ! ……!」
康介が唇をしっかり結んで鼻から高い声を漏らすと同時に、彩希の拳から頭だけ出していた男茎の脳天からビュウッと白い柱が上がった。
「わっ……!」
手の中が激しく脈動して何本もの白濁が噴出し、角度のついた放物線で康介の胸から腹のジャージへと降っていく。
「……康ちゃん……」
初めて見た。「気持ちいいとメチャ飛ぶよ?」――高校時代の女子どうしのエロ話の中で、既に何人か経験している子が言っていたが、こんなにも? だがここまで飛ばすということは、つまりは康介がそれだけ感じてくれているということだ。
(キレイ……)
ジャージに凝着した白濁は、息を乱した康介の胸の喘ぎに合わせてプルンと動いていた。二人の体温に蒸された空気の中を青臭い匂いが漂ってくる。扱きをやめてしまっていた手の中で、まだ康介は思い出したように脈動していた。
「バ、バカやろ……、ね、姉ちゃん……」
目頭を押さえたまま康介が呻いた。照れなくていい。メチャクチャ可愛かった。手の中に握っている肉幹がピクピクと可憐に震えている。更にぎゅっと指に力を入れると、
「……う、はっ」
康介が悶えて先端から少量の飛沫を飛ばす。彩希はもっと近くで見たくなって、男茎を握ったまま椅子から降りると康介の足元に跪いた。拳を根元の方へ降ろして詳しく鑑賞する。傘を開いた頭が漏らしてしまった雫にヌラヌラと光っていた。ギリギリまで顔を近づけて凝視すると、康介の匂いが強く鼻腔を刺激してきた。
友達は「イカくせえ」と、思い出しただけで顔を顰めていたが、とんでもない。うっとりと酔い痴れてしまいそうな芳香だった。手で上下左右に捻って全方角からまじまじと見つめていると、自分の指の間に粘液が糸を引いていることに気づいた。幹を逆の手で持ち替えて、顔の前で指間を開く。振り子のように小さな雫が揺れていた。
「んっ……」
舌を伸ばして雫玉を捉えた。腹の上に乗せると味覚が刺激される。一滴では足らなくて、彩希は指先から自分の指を含んで垂れていたシロップを舐めとった。利き手ではない方で握っているのでぎこちなく、爪先が敏感な場所に当たって、トロリとした新しいシロップを指に感じた。
「……離してよ姉ちゃん、……ふ、拭きたい」
「うん、わかった」
そう言って顔を近づけ、先端を啄んだ。体の他の部分では感じることができないツルリとした感触。思った通り指よりもずっと味が濃い。
「うっ、わ……、何して……」
「拭いたげる」
そう言って先端に吸い付くと、唇を搾りつつゆっくりと口内へ康介を導き入れていった。表面に纏っている馥郁を寸分たりとも逃さないように口腔で密閉した。
頭を上下させて吸い付いていると、康介が背凭れから上体を起こして彩希の肩を持った。それでも彩希は離さなかった。
「くっ、ちょ、姉ちゃんっ……」
康介が床に足をついて立ち上がる。
(やぁ……)
弟の前に膝をつかされ、しゃぶらされているような体勢になった。男茎は完全に回復している。そして康介の熱さ、ヌメり、匂い、そして味に耽溺している彩希のショーツの中は、まだ誰も触っていないのに蜜まみれになって緩んでいる。
吸い付いたまま口を外すと、チュバッと想定外にイヤラしい音がした。唾液に混ざって口内に溜まっていた康介の体液を、鼻先を天に向けて嚥下する。その目の前で肉幹は急角度で反り立っていた。
「……ちょ、き、着替える」
勃起を揺らして康介が部屋から小走りに出て行った。姉と目を合わせようとしなかった。一人残されると、今からあんなに大きいモノが自分の祠に入るのだろうかと彩希は不安を覚えた。狭いところへこじ入ってくる……。そんなことをされたら破瓜の痛みが増幅するかもしれない。
康ちゃんのためだもん。
自分自身へ覚悟を決めさせるために、彩希は立ち上がると、ロングTシャツの裾を持って、裏返しに頭から抜き取った。恥ずかしくも染みの広がったショーツを脱ぎ、衣装ケースから現時点持っている中で最も派手な、あの雑誌の女の子たちが身につけていた物となるべく近そうな下着を選んで身につけて布団の中に潜り込んだ。