萌芽-3
頬を窪め、眉間に皺を寄せながら必死に顔を上下させる恵。
…じゅるっ…ちゅぷっ…
卑猥な音が鳴るのも気にせず、まさに一意攻苦というべき様相だ。
“さっきは本当に危なかった…。あれを後二回耐えるなんてきっとできない。今ここで頑張らないと!”
『絶対口で射精させる』という決意が陰茎を通じて伝わってくる。
恵の口内の生暖かさと唾液で濡れた感触を感じながら、男は湧いてくる笑いをこらえていた。
“その必死さが破滅へのプロローグだとも知らず、懸命な事だ。”
恵の姿をあざ笑う男の陰茎は、射精後間もないというのに既に隆々とそそり立っている。恵は己の口技が奏功していると思っているだろうが、それがまた可笑しい。
“お前程度の口マンコでどうこうできるはずがないだろ。”
時間は無情にも刻一刻と過ぎていった…。
「残り5分。」
恵の口唇奉仕を受けながら、男は身をかがめ、ベッドサイドに転がっていた砂時計をひっくり返した。ひょうたん型のガラスの中、砂が上から下にこぼれ落ちていく。
恵は陰茎をくわえたまま横目で砂時計を確認した。
“残り半分…もっと頑張らなきゃ…。”
恥も外聞もなく必死にフェラチオしているつもりだが、男の陰茎は硬く直立したまま、一向に精を吐き出す様子がない。
確かに今まで、どれほど早くても20分より早く男をイかせた事などない。いや、それどころか平均すると一回当たり30分以上はかかっているだろう。
“しかも一度射精した後だし…”
恵は己が目標の高さに暗澹たる気持ちになったが、それでも今は頑張るしかない。鼻の下を伸ばしきり、できるだけ強く陰茎を吸いながら高速で頭を上下させる。
フェラチオを始めて6分。既に額には少なくない汗がにじんでいた。
鮮やかな青色の砂が静かに時を刻む中、恵の努力は徒労に終わろうとしていた。
「残り1分。」
頭上からかけられる声は一片の情も感じられない。
恵の体力は限界を迎えようとしていた。
口が上手く閉じられず、ペニスを吸う力も無くなりつつある。顔を上下するスピードも今や最初の半分も無い。
“も…う…ダメ…”
これほどまでに刺激したにもかかわらず、口内の陰茎は変化の兆しすら無い。
“やっぱり時間が短すぎる…せめてあと10分あれば…。”
砂時計の砂が落ちきるまであと数秒を残すばかり。恵は過去に感じた事を再び思い返していた。
『この男が自分で動くタイプのフェラチオでないと射精させるのは難しい』
それは逆に言うと、その方法ならば男が短時間で射精する可能性があるという事だ。
しかし、夫や元彼にされた経験など無く、イラマチオという言葉を知らない恵にとって、それは常識の範囲外にあるもので、自らを窒息死の危機に追い込んだ恐怖の行為だ。
いかに男を射精させたいと言っても、容易に肯定する事など出来ない。
“でも……”