萌芽-2
降って湧いた解放のチャンス…。
人妻の恵は一心不乱に己の口腔粘膜で夫ではない男のチンポを擦っている。
その様子はある種の悲壮さを感じさせるが、この物語の結末を知る男にとってはファルスの中の一場面でしかない。
“ふ…お前にとっては悲劇だろうが、これは喜劇なんだよ。”
本来全く異なっていたであろう恵の物語を強制的に書き換えてしまった男は、己の行った行為の残酷さを、陰茎から伝わる感触とともに味わっていた。
“お前はここで解放されれば、また元の生活に戻れると思っているかもしれないが、それはもう無理なんだよ。”
恵の痴態の全てはビデオ撮影されており、そのデータは既に何万回もウェブ上で閲覧されている。
顔に薄いモザイクがかかっているので個人を特定することは出来ないが、男は、恵の同僚教師や担当クラスの生徒、その保護者、同じ町内の住民、友人、高校や中学、小学校の同級生などからピックアップした者達に、匿名でURLと一枚の画像を添付したメールを送っており、そのうち幾人かは恵の動画や画像を見ているはずだ。
『あなたがよく知っている女性です。』
とだけ書かれたフェラ画像付きメールがどれほど好奇心を刺激するかは、想像に難くない。多くの男にとって、それは匿名メールの怪しさとURLを踏むリスクを超えるものだろう。
そして、そういった者達がリンク先のサイトで恵の動画や写真を見れば、確信は持てないものの、童顔の人妻音楽教師を思い浮かべるはずだ。
“噂は既に広まっているだろうからな。”
そう、男の計算通り、恵についての不穏な噂は既に各所に広まりつつあった。担任をしていたクラス内部、町内、職員室で。
例えこの場から解放され、ここでした事、された事を隠したとしても、周囲の恵を見る目は確実に変わっている。元通りなど不可能な程に。
“まあ、そんな状況でお前がもがき苦しむ様を見るのも悪くないが、それは別の女で味わうとしよう。”
男が描く物語のエンディングは既に決まっており、そこに至るための手はいくつも打ってある。今更、それを変更するつもりなど全くなかった。
ウェブ上にあげたモザイク入りのハイライト動画や画像とは別に、男は自ら運営する深層ウェブの会員制サイトにもデータをアップしており、希望者にはフルサイズの目線なし動画や写真をDVDに焼いて送付している。
一般人向けのものと異なり、モザイクがかかっているとはいえ、男の姿や殺人、誘拐、レイプといった犯罪の証拠ともいえる場面が写っているそのデータは、それぞれ編集が異なっており、万が一表に流出した場合、誰がやったのかが分かるようになっていた。そして、もしそうなった場合はその会員は闇に葬られる。男が所属する組織によって…。
そう。男は地下に蠢く人身売買組織の調教師兼サプライヤーであり、恵に用意された未来は、男によって『商品化』され、会員であるバイヤーに売りさばかれるというものだった。
ただ、男の場合は他のサプライヤーと違い、フリーの立ち位置で、己の気に入った獲物を好きなように調教して、飽きた時に売り払うというスタイルだ。
一見、わがまま放題のやり方だが、選ばれる女の質の高さと『商品』としての性能の高さ故、マニアックな支持者が少なくない。
そんな者達から恵には既にいくつかの予約が入っており、『商品化』される…つまり、調教の末、男が飽きるのを待っているという状態だった。
そうとも知らぬ恵は、偽りの可能性とあり得ない未来を信じ、ひたすら男の陰茎を舐めしゃぶっていた。