俺と付き合って下さい!-6
うっすらと暗闇に包まれた夜の公園。そんな場所に所々優しい光が差し込む。
「……。」
俺は険しい顔を解く事が出来ず、ただひたすら地面に視線を落としていた。
「あのさー、若葉がアンタに用があるって。」
「え…。」
突然、巴から掛かって来た一本の電話。
「あの小心者が夜中に会いたいって言うから相当よ…、真剣に相手をしてあげなかったら
今度は百裂アタックをお見舞いするから。」
「…そんな事しねぇよ。」
「どーだが、アンタ…私と付き合ってた時も本当ちゃらんぽらんしてたしな。」
「まぁ、それは…。」
アイツと恋人だった頃の日々が巡るめく思い返る。
「今、お前が俺の事をどー思ってるか知らないケド、これだけは言える。」
「はっ?何よ一端に…。」
「今から彼女と会うのにふざけたり何か絶対しない。」
「……。」
「俺が柊さんに声を掛けたのだって、本気で。」
「何があったんだが、二人の間で。」
「今度こそ、本気で好きだって思える人が出来た気がしたんだ。」
「バカが何寝ぼけた事をほざいてんだが…。分かってる?アンタその前にやる事があるでしょうが。」
柊さんから大事な話がある。と言うだけ他に何も語ってはいないもののお互い何の話かは
理解していて。
「あぁ、勿論後でちゃんと先輩に…。」
「何よっ!あの子と話してからそれをする気?普通先に先輩と別れてからでしょう!」
「それは、まぁ…。」
「ホント、そういういい加減な所変わってないね、何でアンタ見たいなのが女の子に好かれるんだろうね?私もどうかしてたよ、アンタみたいな奴と付き合ってた、だ何て。」
「……。」
巴の口撃がいつになく容赦がない。
「まぁいいさ、私や顔外見だけでアンタ何かを好きになる奴なら幾ら傷つけたって良い。
でもっ!若葉を悲しませたら…、本当に許さないからっ!あのこはとても純粋で優しくて
早乙女先輩や他の女とは違うんだから。」
「あぁ。」
「大事に、してやりなさいよ。」
「あぁ、……巴、ありがとうな、態々。」
「はっ!ホントどうしちゃったのよ、いつもの能無し単細胞は何処行った訳?。」
「お前なぁ…。」
電話の向こうから、怒りに混ざって彼女の悲しい泣き声が聞こえるのは気のせいか?
「でも、私の方こそゴメンね…。ちょっと冷静じゃなかったかも。」
「巴…。」
「じゃ、そろそろ切るね!」
最後は般若のお面を外したかのように、優しい口調で俺らの成功を祈ってくれた。
「……。」
俺は深い息を思いっきり夜空に向けて掃き出し。
いつからだろうか、彼女を柊さんを意識し出したのは…。
最初はただの転校生、見ない顔だな、くらいにしか思わなかったのに、気が付いたら。
でも、俺も罪な男だよな、クラスの女子、巴、早乙女先輩、次から次へと取り換えて…
俺自身、迷ってるのかな…恋愛に対して…、人を愛す事に…。
静寂に包まれた公園。
俺は、意味も無く黄色に輝く三日月型の月を見上げる。
「………。」
少し、肌寒いな…
何て、更けていると。
「……。」
「………。」
何を言うでもなく、気配を消したかのように、スッと彼女は現れて。俺も口を開くでも
なく軽く頭を下げ。向こうも反射的に同じ動作をし。