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耳にキス、キス、キス。
【女性向け 官能小説】

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-1

 日曜の夜は入浴にかける時間をどの曜日よりも長くすると決めている。

 昨晩はこの狭い浴室をヒロキくんとわたしの甘い吐息で満たした。
 お互いの身体を丁寧に洗い、たくさんのキスマークをつけて笑いあった。

 ジャスミンの入浴剤を入れた乳白色の湯船から覗く二の腕に、そのときの痕跡がくっきりと残っている。

 ヒロキくんは明奈を「清々しい気持ちになるような明るいひと」だと言い、明奈はヒロキくんを「子犬みたいな、母性本能をくすぐる系男子ね」と言った。

 お店でわたしたちは色違いのアンティークブローチを買った。
 それぞれ黒色の天然石と桃色の天然石がついた、シルバーでできたライオンのブローチ。

 ヒロキくんはネイビーの帆布と牛革でできた鞄に、わたしはキャメルのベレー帽につけて微笑みあった。おそろいのものを身に付けるのはどうしてこんなにも胸が躍るのだろう。

 その日、わたしはヒロキくんがくれた鐘のネックレスを首からさげて家を出た。シンプルなコットンケーブルニットにとてもよく映えていた。

 ヒロキくんはそれをとても喜び、わたしをきつく抱きしめてくれた。
 そして──。

 わたしは耳の下あたりに触れ、ヒロキくんの言葉を思い出した。
 雫が音をたてる。額にうっすら汗が滲んだ。

「沙保さんがいないと僕はもう生きていけない」

 ヒロキくんはわたしの首にかかっているネックレスのチェーンを左手で掴んでそう言っていた。
 これからもずっと僕だけの沙保さんでいてほしい、とも。

 チェーンを掴んだまま、ヒロキくんはわたしの耳を先日と同じように音をたてて愛撫した。
 彼は沙保さんの首に首輪をつけて鎖で繋いでおきたいと言いながらわたしの髪を乱していった。

 わたしは溺れるようにヒロキくんの腕の中で崩れ、彼の愛撫に酔いしれた。
 ヒロキくんの言葉には「うん」だとか「そうして」だとか短い返事をするだけで精一杯だった。

「鎖で繋いで、縄で縛りたい。どこにも行けないように、僕のそばからいなくならないように」

 そう言いながらわたしを抱いた彼の目を思い出して、わたしはふと彼には何か大きなトラウマでもあるのだろうかと思った。
 信頼していた誰かに裏切られたことがあったり、付き合っていたひとに酷い言葉を投げつけられたり……傷痕になってしまった出来事が。

 わたしはフェイスラインをゆっくりとマッサージし、ジャスミンの香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
 一週間分の疲れのリセットと、明日からまたがんばれるようにとリフレッシュする時間。

 丁寧に髪を洗い、トリートメントをして身体を洗う。
 ボディスクラブを使って肌をつるつるにした。
 最近はヒロキくんに触れられても恥ずかしくない肌でいるためにケアしているとも言っていいかもしれない。

 むせ返るようなムスクの香りやスクラブを掬い取る木製のスプーンの感触が、わたしに日曜日の夜が終わりを迎えようとしていることをおしえてくれる。

 丁寧にケアをして、気に入りのバスタオルで水分を拭い取ったら、ボディスクラブと同じブランドのムスクの香りのボディローションを使って保湿する。
 冬は特に、顔も身体もしっかり保湿をしないとすぐに乾燥してカサカサになってしまう。

 ヒロキくんが耳を舐めることが好きなひとだとわかった日から、わたしは耳のケアにもたくさんの時間を割くようになった。

 耳の裏や耳たぶ、耳介部を今まで以上に指で丁寧に洗ってワセリンで保湿をする。
 耳かきを使うことが減り、細めの綿棒を使って丁寧にお手入れをするようになった。

 ガサガサ音が気になるときはやっぱり耳かきを使ってガリガリと引っ掻くように耳掃除をしてしまうけれど。

 全身のケアが済んだあと、ヘアオイルを馴染ませた髪の毛を乾かしながらミネラルウォーターをコップ一杯ゴクゴクと飲む。



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