二人は未完成-7
スタジオ内が凍りついたのは、いうまでもない。
「ええと、どういうことでしょう?」
「だから、あたしとツトムのセックスを撮影してほしいんです。綺麗に撮ってくれるんでしょ?」
もじもじしながらお願いする姿は、面談で顔を合わせた時の田所さんとダブって見えて。
つーことは、この展開は……。
「お願いします! あなた方なら信用できますし、初めてを素敵な形に残しておきたいんです!」
頭を下げる彼女は、ちょっとやそっとの意見で自分の考えを曲げることはない。
先の面談で結局俺が折れるしかなかった展開がデジャヴとなって、なんだか目がチカチカしてきた。
「ええと、田所様」
言葉を失う俺の代わりにすかさず傳田がフォローに入る。
さすが傳田。もう、バシッと彼女に言ったって。
「つまり、撮影は続行しますが、相手は弊社の御代田ではなく、土居様で……と言うことでしょうか」
「はい」
「よろしいんですか? 撮影をするということは、私どもスタッフの前で性行為を行うということなのですよ?」
「わかっています。契約内容の変更はできないんですか?」
「い、いえ……。急遽弊社のアクターに変更の場合は対応致しかねるのですが、この場合は相手が土居様ですし……、田所様もすでに検査を受けていただいてますし……でも……」
答えに窮した傳田が、助けを求めるような視線をこちらに向けるので、やはり俺が行かないとだめか、と小さく息を吐いた。
「田所様」
「何でしょうか」
「お二人の間の問題は解決致しましたし、無理に撮影なさらなくていいんですよ? それにカップルでお申し込みの場合は、お二方の了承を得られないと撮影はできません」
田所さんの隣で遠い目をして立ち尽くすツトムくんを見ていると、とても納得しているとは思えない。