志津絵-13
押し倒され、お仕着せの着物を剥がれて乳房を吸われた。
志津絵の体はもう、充分に成長していた。
子供の頃の記憶を引き摺り出された志津絵は悲鳴を上げたが、その口に布を突っ込まれ、平手打ちを食らった。
乱暴に男根をねじ込まれ、痛みのうちに志津絵は気を失った。
志津絵は誰にも言わなかった。
田舎での経験がそうさせたのだ。また追い出される、また自分が誘ったと誤解される。もういやだ。
だが、間もなく志津絵は体の変調に気づいた。
生理が来ない。そして、朝や夕方になると気分が悪くなり便所に駆け込んで吐いた。
女中の仲間が志津絵の体調に気づき、店の主人に告げ口していた。女はそう言ったことに敏感である。
志津絵は妊娠していた。「坊ちゃんに乱暴されました」
その時初めて志津絵は訴えたが、当の息子は知らぬ存ぜぬを突き通した。店の主人も、自分の男遊びを息子のせいにするとは許せんと、志津絵を店から追い出した。
ただし、女中を身重で追い出したとなれば世間体が悪い。
主人は医者へ連れて行き、堕胎を受けさせた。
店を出された志津絵は、その日から寝泊りする場所もなく、給仕募集の張り紙を見ては店に声をかけたが、後見人がいない娘を雇えないと追い返されるばかりだった。
簡易宿に泊まりながら仕事を探し、やっと見つかった仕事は盛り場のホステスだった。年は18とごまかした。
部屋はホステスたちと共同だったが、みな同じような田舎出身の女たちばかりで楽しいこともあった。
一際目立つ美貌と、豊満な肉体で志津絵はたちまち人気者になった。指名が入れば給金も上がった。
自分には夜の仕事が向いていると思い始めた。酒も煙草も覚えたが、志津絵はまだ15になったばかりだった。
「志津絵ちゃん、また来てるよ。あんた目当てのあの客」
仲間のホステスに言われて振り向くと、男が店の中で志津絵を探していた。男が座ると志津絵は接客中でも中座し、男の所へ行った。
会社員ではない。服装はいつも柄物のシャツに派手な上着を着ていた。黒めがねをかけていることもある。首にいつも金の太いネックレスをしていた。この辺りのチンピラだと、ママは教えてくれたが、何しろ金払いがいい。
店が終れば志津絵を連れて寿司をご馳走してくれ、服やバッグも買ってくれた。
何度か店に通った後、男は志津絵に言った。
「俺の女になれよ」