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動物の思い
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動物の思い-1

 社長室の前に来ていた。ある事を社長に報告するためだ。
「なあ、木村。ここっていつ来ても緊張するな」
 あまり大声を出すわけにもいかないので、小声で話す。
「当たり前だろ。会社のトップの場所なんだからさ」
 胸が高鳴り、心臓の音が聞こえてきそうだ。
「いくか、前田」
「おう」
 社長室の扉をノックすると、部屋からどうぞとしわがれた声が聞こえてくる。
「「失礼します」」

 背広を着ていて、アメリカの元大統領リンカーンの顔に良く似ている社長が窓を見ている。
「どうしたのかな?」
 いきなり声を掛けられて、ビクッとしてしまう。
「あ、はい。先程の件ですが……」
 社長は手元にある資料を机に投げる。
「ああ、これかい。しかし、〇〇山に道路を作っても本当に良いのかい?」
 前田は胸を張って言う。
「はい! そこに書いてあるとおりですが、〇〇山に道路を作れば住民の交通も良くなると思います」
 それに続いて、木村も胸を張って
「しかも、もう何年後かには高速道路ができると先程の調べで分かりました。ですから、いまが良い機会じゃないでしょうか?」
 難しい顔で考えていた社長は大きく頷いた。
「良いだろう。準備が出来次第取りかかるといい」
「「あ、ありがとうございます!」」と深々と礼をした。


 数年後……道路も出来あがり、交通も良くなった。だが、その反面ゴミ捨てていく人も後が断たない。そして、今日も……。
 ブロオオ、とエンジンを吹かし〇〇山のある所に差しかかると、急に自動車を止めた。運転席から降り、トランクを開けてそこからTVを色々なゴミを捨ててある場所に置く。そして、すぐに去って行った。
 ゴミを捨てている場所には、その後リス、カラス、キツネ、ヘビなど色んな動物が集まってきた。
「まったく人間にも困ったものだね、リス君」
「そうだね。それはそうと、カラスさんは人間に詳しいんだよね?」
 バタバタと翼をはためかせながらカラスは言う。
「うん。一言で言うと、人間というものは愚かな生物だね」
「え、どうしてそう思うの?」
「緑を増やそうなどと言っているが、こんな風に木々や緑を潰して道路とか施設を作っているじゃないか」
 カラスは続けて、語る。
「しかも、さっきみたいにゴミを捨てていく人間も居るだろう。矛盾していると思わないかい?」
「本当だねえー」
 キツネも頷きながら同意する。
「で、本当に緑が無くなったらどうする?」
 さらに、キツネが同意する。
「住む場所が無くなっちゃうねー」
「そうだろう。だからこそ、オレは共生するべきだと思うんだ。そうだろ、ヘビ君」
 ニュルニュルという動きをしながら、語る。
「うーん、そうだね。人間の所へ出ていくと怖がられちゃうからね。別にボクの何処が怖いんだろう?」
「わかんない。でも、共生する道しかないと思うよ」


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