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首輪
【レイプ 官能小説】

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首輪-2

 お客さんがまったくいないときに珍しい商品を眺めるのもおもしろい。
 日報を書いたり、売れた商品の記録をしたりといった細かいことも時間に追われることなくこなすことができる。

 こうしてお客さんとお話をすることも、まるでひっそり佇むバーのバーテンダーにでもなったかのような気がしておもしろい。

 このひとは、狩野さん。
 よくアンティークの指輪やグラスを買ってくださる男のひと。
 自宅でパソコンを使ってする仕事をしていると言っていた。
 淵の細いシルバーの眼鏡をかけている。

「響子ちゃん、俺ね、この街を出ることになったんだ」
「えっ、お引越しですか?」
「うん。仕事の都合でね。引っ越したら今みたいに頻繁には来られないと思う。時間を作って来たいなとは思うんだけど」

 狩野さんが此処で買ったシルバーの指輪をひねるように触りながら続ける。

「それでね、おいしい珈琲豆を買ったから、今日飲みに来ない?」

 わたしは少し迷ったけれど、バイトが終わってからならと返事をした。
 狩野さんも他の常連さんと同じくらいに顔見知りで、そして何よりわたしは珈琲が大好きだった。



 狩野さんの部屋は今日にでも引っ越せるというぐらいに片付いていた。
 ベッドとふたつのモニターが乗っているパソコンデスク、その下に敷いてある毛足の長いラグ以外はほとんどがダンボールの中なのではないかというくらいに。

 わたしは進められるまま社長椅子のようなパソコンチェアーに浅く座って、狩野さんが淹れてくれた珈琲をすすった。
 おいしい。
 ブラックのまま飲んでいるのにほのかに甘い。まろやかで、とても飲みやすい珈琲だった。
「珈琲、おいしいです」
「よかった」

 ベッドに腰掛けて長い脚を弄ぶように組んだ狩野さんが嬉しそうに微笑んで言った。

「響子ちゃん、前に珈琲が好きだって言っていたから。いつかご馳走したいと思っていたんだ」

 自分の珈琲をパソコンデスクに置いた狩野さんが、それからと言ってデスクの隅に置いていた黒い箱をわたしの目の前にことりと置いた。

「響子ちゃんに似合いそうだと思って。今日の服装にもきっとよく似合う」

 そう言って、狩野さんが蓋を開けた。
 黒い革のチョーカーが現れる。

 チョーカーの真ん中からのびたシルバーのチェーンが、同じ黒い革でできた指輪に繋がっている。
 シルバーの台座にのせられた楕円形の赤い石がついた指輪。

 よく見ると、革の表面にはたくさんの薔薇がエンボス加工されて浮かび上がっていた。
 シンプルな、まるで首輪みたいなチョーカー。


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