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【その他 官能小説】

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そして、本番-10

だからと言って田所さんが、彼女らと同じ道を辿るとは思ってはいないけど、ツトムくんのためだけに猪突猛進してしまう彼女には、周りがブレーキ役になってやらなきゃいけない。


そして、それが出来るのは、俺らじゃない。ツトムくんだけなのだ。


どういう手段でツトムくんとコンタクトを取ったのかは、傳田にしかわからないけど、ツトムくんがここに現れた時点で計画は8割成功したはずなのだ……が。


「なんでだよ、彼氏めっちゃ怒ってるじゃねえか!」


頭に血が上ったツトムくんは、すがりつく田所さんの手を乱暴に振り払っては、離れようとする。


悪い会社に騙されてしまう田所さんを救い出すツトムくん、という俺の描いたシナリオとは異なる展開に、爪を噛みながら二人の成り行きをあたふた眺めていた。


「どーしよ……」


オロオロしてばかりの俺の横で、傳田はふうっと息を吐く。


「ここまでかな」


と、一人ごちてから、つかつかとスニーカーを鳴らしながら、田所さん達の元へ歩いていった。


二人のそばで仁王立ちになった傳田は、咳払いを一つしてから、


「待て、コラア!」


と、ドスのきいた声をツトムくんに向けた。


ええっ!?


驚いたのは田所さんやツトムくんだけじゃない。


井出も取手も多田も、そして俺も、初めて見る傳田の啖呵にあんぐりと口を開けるだけだった。


「な、何だよあんた……」


田所さんも、ツトムくんも、驚いて動きが止まる。


それほど傳田の迫力はすごかった。


そして傳田は、ツトムくんの胸ぐらを掴むとズイッと詰め寄った。


「てめえは彼女が『話を聞いて』って泣いてすがってんのを突き放すほど冷酷な男なのか、ああ!?」


傳田の剣幕に、定位置についていた井出達が慌てて俺の側に駆け寄ってくる。


「な、何だよありゃ、ヤンキーか?」


「超怖ぇ……」


「で、傳田さんのイメージが……」


大の男が固まって若い女の子の啖呵にオロオロしっぱなしの構図はなんとも間抜けだろう。


それでも傳田の勢いは止まらず、唾を飛ばさんばかりの勢いでツトムくんに掴みかかっていた。





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