お仕置き-1
翌朝。
奈緒子はホームで電車を待っていた。
入ってきた電車のドアが開き、人混みとともに乗り込もうと歩を進めたときだった。
「―――――きゃっ!!」
何者かに手首を引かれ、後ろから抱きすくめられた。
(なっ、何!?誰!?)
恐怖に身を固くしていると、ふいに腕が解かれ、肩を押された。
「わっ、きゃっ」
よろめきながらも、押されるままに電車のドアへと進み乗り込むと、扉が閉まった。
「――――そんな早く乗ろうとするから、出れなくなっちまうんだよ。」
頭上から降り注ぐ声に顔を上げると、奈緒子の隣で野田が見下ろしていた。
「っ、野田くん・・」
「おはよ、溝口。」
「お、おはよ・・・」
ニッコリ微笑む野田に、奈緒子は顔を赤くしてうつむいた。
昨日あんなことがあったばかりで、野田の顔を直視することが出来なかった。
「溝口」
「な、なに?」
「話をするときは相手の目を見るようにって、小学校で習わなかったか?」
顎をつまみ、上を向かされた。
「あ・・えっと、その・・」
一瞬こそ目が合ったものの、すぐさま視線を泳がせる奈緒子の腕をつかみ、体を反転させた。
「きゃ・・っ」
「わかった。見れないなら見なくていい。」
ドアに向かい合う奈緒子の後ろから覆い被さるようにして、野田がドアに手をついた。
長い髪の隙間から、小さな耳が見える。
爪先で髪をすくい耳にかける。
「その代わり、お仕置きが必要だな―――――」