冷めない熱-1
野田は、帰宅するなり自室にこもると、机に向かいスマートフォンを手にした。
右手には、先程のティッシュが握りしめられている。
つい捨てずに持ち帰ってしまった。
(完全に生殺しだな――――俺、こんな目にあったの初めてかも。)
スマホの画面を眺めながら、異常すぎる非日常を思い出す。
弱々しく抵抗する声。
ひとつひとつの愛撫に反応する姿。
真っ赤になって恥ずかしがる顔。
シャンプーの香り。
すべてが新鮮だった。
いままで野田を誘ってきた女達にはみられない光景に、興奮を禁じ得ない。
ふと、右手のティッシュに視線を移す。
「・・・・・・・」
(イヤイヤ、何考えてんだ俺。変態か?)
自分でも信じられないような衝動が湧き、打ち消すようにぶんぶんと頭を振る。
(・・・・・・・)
結局、衝動に負けた。
机にスマホを置き、ぱんぱんに盛り上がった自身を衣類から解放すると、ティッシュを鼻に押し付けながらしごき上げた――――
「はぁ・・はぁ・・っく・・っ・・」
額ににじむ汗。
幾度も飲み込んでは溜まってゆく唾液。
止まらない左手。
怒張した先端からは透明の涙があふれ、潤滑を加速させる。
「はぁ、はぁ・・ぅあっ、く・・うっ・・」
くちゅ、くちゅ、という水音が、より早くなり水気を増す。
ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ――――
“んぅうううう――――!!!”
スマホの画面を見ながら、奈緒子の声を思い出す。
「・・・・・・ッ!!」
その刹那、手にしたティッシュを野田の先端に押し当てた。
どくり―――
白濁した欲望がおさまりきらずにティッシュからこぼれた。
新たに部屋のボックスティッシュを2、3枚取り出すと、やや元気をなくしたそれと、汚した手をぬぐった。
「はぁ・・・」
それらをゴミ箱にかなぐり捨てると、机に顔をふせため息をついた。
「バカじゃね?俺・・」
自己嫌悪に陥りながら視線を横に流すとゴミ箱が目に入る。
ゴミ箱の中には、奈緒子の愛液と野田の精液が混ざったティッシュ。
まるで、二人が交わった後のような――――
「・・っ、いやいやいや、余計なこと考えない!」
机から起き上がると、頬をぱんぱんと叩く。
「―――あ、そうだ。」
おもむろに机上のノートパソコンを開きマウスを操作する。
ディスプレイには様々な画像が表示された。
いくつかの画像を拡大すると、ふと手を止める。
「・・へぇ、こんなのもあるのか。」
しばらく眺めると、マウスのボタンをクリックした。
(・・・・・・・・。)
画像一覧に戻り、次々に画面を表示しながら、ふたたび股関に手をやっていた―――。