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サヨナラ
【悲恋 恋愛小説】

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サヨナラ-1

屋上。

鍵。

そしてあの人。

もうすぐ皆、サヨナラしなきゃ。





『サヨナラ』





「瞳、どこ行くの?」

「ちょっと休憩」

いってらっしゃいという表情の葉子の隣をすり抜けて私は体育館を出る。

今は卒業式の練習中で、校舎の中は抜け殻だった。

階段を上がる靴の音だけが響く。

「はぁ・・・・」

卒業式の練習なんてやってらんない。

皆で涙して歌を唄って拍手して。

そりゃ卒業生はいいかもしれない。

これからの新生活に期待もあるだろうし、新しい出会いもある。

だけど・・・・残されたほうは?

残される私の想いは?

残される気持ちなんて、置いてくほうにはわからないんだ。

♪♪〜〜〜

急に鳴った携帯の着メロに思わずドキッとする。

タイミングよすぎだよ、どっかから見てるわけ?

あの人の、あのメロディ。

『屋上』

たった一言のメールだけでここまで私の気持ちを乱す。

外で吹いている春風のように。

せっかく咲き誇った桜を全て散らしてしまう風のように。

その風はガタガタと窓を揺らす。

小さくため息をついて、私は階段を一段飛ばしで駆け上がった。



あの人は行ってしまう。

私を残して。

私の想いも知らぬまま。


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