サヨナラ-4
次の日の卒業式は、嫌になるくらいのいい天気で桜のピンクが目に染みた。
私は式には参加しなかった。
あの人の答辞なんか聞きたくないし。
それで結局私が来た場所は。
「一日で破れた誓いか」
屋上の手すりに寄りかかりながら乾いた笑い声をあげた。
情けないけど私の居場所はここしかないみたい。
でも大丈夫。
今頃あの人は後輩達に取り囲まれているだろうから。
ここへなんか来る訳ない。
「はぁ―――!いい天気ィー」
ったく。空まであの人の卒業を祝わなくてもいいじゃない。
嫌いだよ。
卒業式なんか。
ポケットから私は自分の鍵を取り出した。
光るそれを、振りかぶって思いっきり投げる。
太陽の光を受けてキラキラ輝きながら、それはどこかへ飛んでいった。
これでサヨナラ。
私とあの人をつなぐもの。
これでサヨナラ。
私とあの人のこの屋上。
昨日あの人からもらった鍵もここを閉めたら捨ててやろう。
教室のゴミ箱にでも。
「バカだな、先輩は」
笑いが込み上げて来た。
「写メるなら今なのに」
まだ今は、あの人との思い出に浸ろう。
まだ今は、あの人の話をしよう。
まだ今は、この屋上にいよう。
この涙と、サヨナラするまで。
「・・・先輩、さようなら」
この想いと、サヨナラするまで。