隔離された腕の中で-1
――ふいに、その腕が掴まれた。
「・・もっと、よく見せて。」
掴んだ手首を奈緒子の肩口あたりの壁に押し付けると、奈緒子の肩が開かれ、胸がさらけ出される。
(――――いやっ・・!)
胸を隠そうとした腕は、あろうことか露呈するきっかけになってしまった。
左手に鞄を持つ奈緒子は、右手を封じられてしまうと抵抗できない。
対する野田は、ショルダータイプのスクールバッグを使用しているため、両手が自由になる。
奈緒子の圧倒的不利な状況。
「やめて・・!見ないで・・っ!」
「変に暴れると、みんなに見られるぞ?」
「・・・っ」
「それとも・・みんなに見てもらいたい?樋口のオッパイ。」
「――――――!!」
奈緒子の顔が青ざめる。
(や、やだやだっ!見てほしいわけないじゃない!!)
ふるふると首を振る。
「―――――よかった」
野田はふっと笑うと、空いていた右手の肘を壁につけ、奈緒子をすっぽりと覆った。
「エッチな女の子は好きだけど、俺は、みんなで堪能するよりも、独り占めしたい派。」
ニッコリ笑うと、右手は肘をついたまま、奈緒子の指にふれる。
指をきゅっと絡めると、手首を掴んでいた左手を離し、するりと撫で下ろす。
手首から肘を通り、二の腕を撫でる。
脇をかすめ、たくし上げられた服の上を通って、右胸にたどり着く。
奈緒子の正面と左側は、肘をついた野田の身体で覆われた。
右側には、座席との隔たりがある。
奈緒子達が乗る電車は、金属製のパイプではなく、白いプラスチック製の板が採用されているため、右側からは身体どころか顔すらも見えない。
奈緒子は、周囲から完全に隔離された――――
不安げな瞳に劣情をかきたてられながら、胸のふくらみに触れる。
(・・やわらけー。マシュマロみたいだ。)
しっとりとした、滑らかな肌。
少しでも力を入れると、膨らみに吸い込まれるほど柔らかいのに、離せばすぐに元に戻る弾力性。
興奮に早まっていく鼓動。
体の中心に血液が集まってゆくのを感じる。
「・・・っ、んん・・っ」
顔を背け、ぎゅっと目を閉じて恥辱に絶える奈緒子の横顔を眺めながら、その胸の感触を楽しむ。
野田の指先は、奈緒子の指先を、優しく、せわしく撫でつけていた。