投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

a village
【二次創作 その他小説】

a villageの最初へ a village 137 a village 139 a villageの最後へ

J-20

※1「♪アァイラァブュ、アアイラァブュ、いぃつまでもぉ、いつまでもぉ♪」

 段々、歌に熱が入って来る。何時しか林田も、雛子の声に自分の声を、重ね合わせていた。

※1「♪夢うつぅつぅ、さまよいましょう、ほしかげぇのぉ、こぉみちよぉ♪」

 漸く歌が止み、二人の足取りが、幾分速くなる。互いを見合せ笑みを交わした。

「この、二番も素敵なんですよね」
※1「“抱かれて、たたずみましょう”って部分でしょう?」
「なんで知ってるの!」

 雛子の驚き様に、林田は“言わずものがな”とでも言いたげだ。

「僕だって、何回も聴きましたから」
「私、びっくりしたんです。終戦から五年後に、“アイラブユー”なんて言葉を歌に乗せるなんて。あの頃は、ずっと憧れてました」
「歌詞の様な、色恋にですか?」
「ええっ!大人の恋愛に」

 陶酔の中で発した本心。林田は、あえて聞き流す事にした。

「それじゃあ、お休みなさい」
「送って頂いて、有難うございました」

 家の前の坂道で、二人は分かれた。
 坂道を登る雛子の姿を、林田は暫く眺めていたが、やがて踵を返すと自身の下宿先、椎葉の家へと歩を進めた。

※1「♪アァイラァブュ、アアイラァブュ♪……」

 その足取りは、実に軽やかであった。



 「a village」J完



※1 題名:星影の小径
   作詞:矢野 亮
   作曲:利根一郎
   歌 :小畑 実
   所属:キングレコード


a villageの最初へ a village 137 a village 139 a villageの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前