投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

a village
【二次創作 その他小説】

a villageの最初へ a village 132 a village 134 a villageの最後へ

J-15

「そんな意地悪言わないで、ねえ?先程の事でしたら、この通りに謝りますから」

 林田は、地面にひれ伏した──。その格好は、正に土下座そのものである。
 雛子も吉岡も、その姿に度肝を抜かした。

「あんた、何をしてるんだ!」

 吉岡は、慌ててしゃがみ込むと、林田の身体を引き起こそうとした。
 男の土下座とは、おしなべて事を大袈裟にしてしまう。が、その様子を見つめる雛子の心底には、軽蔑の思いが涌き上がっていた。
 最初こそ面喰らったが、その余りに自己中心的で無節操な態度が、許せ無かった。

「貴方は又……人としての矜持(きょうじ)も無く、自分の事だけしか考えずに……他人を悪者に仕立てる様な真似を」

 学校で見せた、烈火の如き怒りとは真逆な、青白き炎の如く静かな口調で林田を罵倒した。

「二人共、もう辞めなさい!」

 雛子と林田の関係が、決定的な物となり掛けた時、吉岡が、二人の間で声を荒げた。

「何が遇ったか知りませんが、もう辞めなさい!いい大人二人が……恥ずかしくないのですか!」

 思い掛けない吉岡からの叱責に、雛子も、そして林田も気圧された様子で、揃って口を噤んでしまった。

「御免なさい……吉岡さんに、嫌な思いをさせてしまって」

 謝りながら、雛子は己の稚拙な気性を呪った。
 幾ら、林田の言動が許せなかったとしても、怒りで我を忘れるばかりか、吉岡に止められる迄、気付か無かった事を。

「あの、吉岡さん」

 林田が立ち上がって、吉岡に頭を下げた。

「申し訳ありません。僕が至らなかったのが原因であって、彼女は、僕が巻き込んでしまったのです」

 二人の謝意を耳にして、吉岡も漸く、厳しい表情を解いた。

「いえ。僕の方こそ、……あ〜!又、やってしまったっ」

 奇声を挙げる吉岡に、唖然とする二人。

「駄目なんです……争い事を目にすると、黙ってられなくて」

 聞けば、根っからの平和主義で、子供の頃から仲裁役を買って出る程、争い事が苦手な性分らしく、そのせいで何度も酷い目に遇って来たそうで、自分でも改めなければと、反省の日々を送っていたと言う。

「──さっきも、気付いたら大きな声を挙げていて……そのくせ、後で、身体が震えて来て。度胸が有るんだか、無いんだか。困ったものです」

 そう言って、照れた様に頭を掻く。そんな吉岡の“意外な一面”に触れて、雛子も林田も、表情が和やかだ。

「本当に、有り難うございました。危うく“仲違い”してしまう所を、貴方のおかげで助けられました」

 林田は礼を言うと、再び頭を下げた。
 すると雛子も、合わせる様に感謝を述べた。


a villageの最初へ a village 132 a village 134 a villageの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前