半獣奇譚-3
「犬にも冥土ってあるの?」
「そりゃございますよ。ちゃんと神様までいらっしゃいます。」
「犬の神様!?」
「犬専属の神様かどうか分かりませんが神様はいらっしゃいますよ。」
クマを座らせて、ぬかを詰めた袋で洗ってやると、私は犬の顔をした神様を想像してクススと笑ってしまった。
「奥様仰ったじゃあないですか、大好きな河原に埋葬して頂いた時にきっと今度は人に生まれ変わって共に暮らそうって・・・」
たしかに涙に咽びながら、そう言った。あの時にはまだ数人いた使用人と私だけだったから、やはりこれはクマなのだろうか?
まだ半信半疑だけど、信じろと言って簡単な事ではない。
「それでね。その旨を神様に申し上げると五年の歳月がかかっちまいましたよ。」
「人が生まれ代わるには冥土で修行をすると聞いたわよ。そのくらいはかかるんじゃあないの?」
「修行ったって、特に何にもしちゃいません。ただ、待ってただけなんですがね・・・」
さっきからいったい何を手にしているのかと思っていたら、私はそれを見て涙が出るほど笑ってしまう。
「この通り、急拵えなのですよぉ・・・」
クマのお尻には黒い尻尾が生えていて、それをまたふるふると振ってみせた。
頭髪もなく、眉もなく、陰毛も体には全く毛が生えていないくせに尻尾にだけは相変わらずの黒い毛が薄っすらと残っている。
そうして次の瞬間、私は思わず息を呑んだ。
大きな睾丸がふたつと太い男根をぶら下げていたのだった。
もう、それが気になって仕方がなかった。こんなだから私はすぐ、男に騙されるのだ。
さり気なく体を擦り、それを手に取ってぬか袋で磨いてやれば確かに異形ではあった。
初卵(若い鶏が産んだ小ぶりの卵)をちょうど三個縦に繋いだような形をしていて、括れがついている。
それだけでも立派なものなのに、そうしているとさらに薄桃色のものが中から一寸ばかり飛び出してきた。
こんなものを挿れられてみたい・・・つくづくこんなだから、私はすぐに男に騙される。
そしたら急にクマは裾を捲くった私のお尻の匂いを嗅ぎ出した。