宴への誘い-2
「お待たせ〜」
固い表情の瑞季を除き、女達はにこやかに出てきた。
「おう、丁度準備ができたところだ。ん?あれれ?水着はどうした?」
出てきた女達を見て忠は驚いた。特に恵子は水着を着るのを楽しみにしていたから、Tシャツにスカート姿の恵子を見て忠は不思議に思った。
「ちょっと大胆過ぎて恥ずかしくなったのよ。だから上から重ね着したの」
人の善い美弥子は、瑞季とのことを出さずに、さらりとそう言った。しかし、恥ずかしければ恥ずかしいほど悦ぶ女達の言葉とは思えない。忠は瑞季と何かあったんだと直ぐに理解した。
美弥子達が凄く卑猥な格好で出てくると知らされていた幸樹はガッカリした。
「そうか、まあ追々と楽しめればいいか。時間はまだまだあるんだし」
「あら、瑞季ちゃんと幸樹くんにはそんなに時間はないわよ。バーベキュー食べたら帰らなくちゃいけないのよ」
「ええっ!どうしてだよっ!」
一番反応したのは幸樹だった。忠が美弥子にそれを聞く前に、幸樹は凄い形相をしながら瑞季に聞いた。
幸樹の剣幕に驚いた瑞季は困った顔をしたが、淫らな女達はほくそ笑んだ。
(うふふ、忠くん達、上手く幸樹くんを取り込んだようね)
「まあまあ、幸樹くん、とりあえず食べましょうよ。朝から何も食べてないからお腹ペコペコよ。沢山用意したから遠慮なく食べてね」
精力絶倫の忠と新司は健啖家だ。同様に毎日の激しいセックスで体力を消耗する女達もよく食べた。
それでも食べきれない量を用意していたから、美弥子はこの時ばかりは、なんのこだわりもなく、純粋に瑞季と幸樹に勧めた。
「ほらほら幸樹くん、焼けてるわよ。早く食べないと、大飯食らいの恵子ちゃんが食べちゃうわよ」
「だってお腹が空くんだもの」
何もセックスが目的でなくても、野外の食事は5割増しで楽しくて美味しいものだ。ましてや、回りを見渡せば、非日常で心弾むトロピカルな風景だ。楽しくないわけがなかった。
初めは遠慮がちな瑞季だったが、卑猥な要素を除いても有能な新司と忠の話題豊富なトークと、周囲の開放的な雰囲気に釣られ、いつの間にか結構な量を食べ、且つ飲んでいた。
瑞季はほんのり頬を染めて、離婚以来初めて味わう心地好い気だるさを堪能していた。
「ねえ新司さん、瑞季さんも少し休んだ方がいいみたいだし、駅に送る前にちょっと腹ごなしに海に行かない?」
少しうつらうつらし始めた瑞季を見ながら言った。しかし、この恵子の言葉が合図となった。
「そうだな。せっかくだから行こうか。でも水着はどうするんだ?」
「うんうん、別に泳がなくても足だけ浸けたらそれでいいわ」
「そうか。恵子がいいならそれでいいか」
2人の会話を聞きながら、瑞季はなんだか申し訳なく思った。
誰も見ていない海の中にまで、婚約者同士の衣装のことを制限したのはやり過ぎだったかもしれない。
しかし、瑞季は気づいていなかった。瑞季に背中を向けて恵子と会話をする新司は、穿き替えていた水着の前をずらして、そそり起った肉棒を引っ張り出していたことを。
「恵子ちゃん、浜辺は日射しの照り返しがきついわよ。さっき部屋でも塗ってきたけど、もう一度、日焼け止めをタップリ塗っときなさいよ」
瞳が色白の恵子を気遣った。ように瑞季の目に映った。
「はい、ありがとうございます。そうだ、せっかくだから、お義母様もどうですか?」
「そう、じゃあ気を使って断るのも今更だし、一緒に散歩でもしようかな」
その誘いが社交辞令ではなく、人の善い恵子が心から誘っていることを知る瞳は快く同意した。ように瑞季の目に映った。
「じゃあ新司さん、お義母様にも日焼け止めを塗って差し上げて」
恵子は母思いの新司に、この機会に親孝行させてあげようとした。ように瑞季の目に映った。
「じゃぁあ、けぃ、恵子ちゃんわあ〜、ぉ母さんが塗ってぁげるっわねぇ」
「やあね、お母さんたら飲み過ぎよ。手元が狂ってお肌がまだらになりそうだから遠慮します。少し休んでて。お父さん、お願い」
恵子は呂律が回らなくなった美弥子を気遣い、代わりに日焼け止めを気さくな父親に渡した。ように瑞季の目に映った。