着替えの時間-1
【着替えの時間】
「よーし、荷物を整理したら、男達でバーべキュウの用意をする。女性陣は水着に着替えておいで」
「はーい」
忠の言葉に、淫らな女達は楽しそうに答えた。しかし、自分の立場をわきまえた瑞季は、3人と同じようにはしゃぐワケにはいかなかった。
「いえ、私も忠さんたちのお手伝いさせて下さい」
今回の旅行に直前に割り込んだ瑞季の立場では、それは尤もな反応だった。しかし、そんな遠慮は気の善い美弥子には通用しなかった。
「瑞季さんたら、何を言ってるのよ。今回の旅行は普段家事に追われる女達を労わるための旅行なのよ。ここに居る間は普段休めない分、一杯体を休めないといけないわよ。でないと、たっぷりと楽しめないわよ。ね〜瞳さん」
「で、でも…」
「瑞季ちゃん、お願いだから気を使わないで。瑞季ちゃんが気を使って忠さんのお手伝いをすれば、気の善い美弥子さんも恵子ちゃんもゆっくりできないから。2人のために遠慮しないで」
瞳にそこまで言われると、もう意地を張ることはできない。瑞季は素直に従うことにした。
「はい、わかりました」
その言葉を聞いた美弥子と恵子は、心から嬉しそうな笑みを浮かべた。
(この人達って、本当に優しい人達なんだ)
「じゃあ、水着に着替えて、頑張る男達の目の保養をしてあげるぞ!」
「はーい。目の保養をしてあげるぞ!」
美弥子の掛け声に瞳と恵子が和した。出遅れた瑞季も瞳の視線を感じて慌てて続いた。
「は、はーい。め、目の保養をしてあげるぞ!」
瑞季は自分の言葉に赤面した。何故なら5年前に着た水着は、足を長く見せるために結構ハイレグの水着を買っていたのだ。
昨日はテンパっていたから気にも留めなかったが、いざ、水着を着る段になって躊躇してしまった。
四捨五入で30歳の5年前なら抵抗なく着れたが、アラフォーの今では凄く勇気が要った。
「ふう…(こんな際どい水着で男の人の前に出れないわ…)」
水着を握り締めながら瑞季はため息を漏らした。
「あら、可愛い水着ね。早く着替えなさいよ」
「で、でも…」
躊躇する瑞季に、瞳はもう一度念を押した。
「瑞季ちゃん、お願い。美弥子さん達に気を使わせないで」
そこまで言われると仕方がない。瑞季は覚悟を決めた。しかし、3人の前で着替えるには抵抗があった。瑞季は洋室で服を脱ぎ始めた3人を横目に見ながら、水着を持って浴室に向かった。
姿見の前で服を脱ぎ、スカートを脱いだ。鏡に映る自分の姿を見ながら瑞季は背中に手を回してホックを外した。ハラリと落ちたブラジャーから現れた胸は、まだまだ崩れてはいない。瑞季はふうっとため息を漏らした。
下半身を包む下着に手を掛け、ゆっくりと降ろした。手にした下着を見て昨日のことを思い出したが、直ぐに気を取り直して、バックから出したビニール袋に下着を入れると、そのバックの奥深くに隠した。
全裸の瑞季は下半身に目を向けた。瞳達と違って黒々とした陰毛が卑猥なワレメを隠していた。
「あたしのおまんこ…」
妄想の残滓が影響し、卑猥な単語が生まれて始めて瑞季の口から零れた。自らの耳でその卑猥な韻を聞いた瑞季はハッとなった。
「バ、バカ!な、なに言ってんのよ!そうじゃなくて、出がけに少し処理したけど、毛がはみ出さないかしらー!」
自ら放った卑猥な単語を消すように、瑞季は一人きりの浴室の中で声を大きくした。
そして予想よりも大きくなった声が浴室の中に響き、驚いた瑞季はまたハッとなった。
(あたしったら、何やってんだろ…)
改めて瑞季は股間を見下ろした。ハイレグのV字ラインに沿って陰毛を処理をしたが、瑞季は少し処理の出来映えが心配になった。しかしいつまでも心配していても仕方が無いので、思い切って水着を着ることにした。
毛ははみ出していなかった。
それと、かなり恥ずかしいが、客観的に見ても合格ラインだった。昨日の電話で瞳から『彼氏居るの?』と聞かれたことを思い出した。
「彼氏か…。まだまだいけそうね」
そうつぶやいた途端、瑞季の脳裏にまた美弥子の呪文のようなフレーズが響いた。