瑞季の相談相手-2
『お、お義姉さんはその時どうやって解決したんですか?幸樹があたしを女として見てると思うと、どう接したらいいか…』
思春期特有の異性に対する好奇心から来ることで、恋人が出来るまでの一過性のことだろうが、瑞季の想像は禁断の行為にまで飛躍していた。瞳と違って生真面目な瑞季はそれを良しとは思えなかった。
「まあまあ、落ち着いて」
『だってだって…。このままじゃ一つ屋根の下で暮らせない…』
瑞季は昔から生真面目な性格だった。離婚の原因も旦那のちょっとした浮気だったが、瑞季はそれを許さなかった。今回の件も一度思い込んだ妄想からは瑞季は逃れられなかったのだ。
(瑞季ちゃんの性格だと幸樹くんとの関係がギクシャクして、将来まで拗れちゃうかもしれないわね)
瞳は数少ない親族がそんなことにならないように考えた。こんな時は他に目を向けさせて気を紛らわすことが一番だ。得てして『気を紛らわす』イベントが都合よく用意されているものだった。
「そうだ瑞季ちゃん、あなたの仕事って月曜日はお休みでしょ。あたし達明日から海水浴に行くんだけど、あなたも幸樹くんと一緒に来ない?こんな時は外に出て発散するのが一番よ」
『え?あ、あたしは休みですけど、幸樹は学校が…』
「受験は来年でしょ。1日や2日は休んだくらいは大丈夫よ。このままじゃ幸樹くんだって勉強どころじゃないはずよ。なんなら火曜日も休んで泊りなさいよ。その間に、あたしと新司でちゃんと諭して上げるから、あたし達に任せなさい。」
(2人で幸樹を諭してくれる)
幸樹は昔から叔母の瞳と従弟の新司の言うことは素直に聞いていたから、瞳のその一言で瑞季の心は直ぐに決まった。
『ほ、本当ですか?じゃ、じゃあ、幸樹を連れて参加します』
仕事の忙しい時期は先週で終わっていたので、火曜日も無理なく休めると算段した。
「じゃあ決定ね。急な話だけど水着とか用意できる?」
瑞希は5年前に家族で海水浴に行った時の水着があることを思い出した。幸い5年前から体のサイズは変っていない。
『はい、大丈夫だと思います』
「そう、よかった。楽しみだわ」
瞳は瑞季の水着姿を思い浮かべて妖しく微笑んだ。これも美弥子達との交流で芽生えたことだったが、今の瞳の性の対象は男女を問わなかった。
しかし、一つ確認しなければならないことがあった。瞳は誘った後にそのことに気付いた。
「ところで瑞季ちゃんて彼氏は居るの」
もし、特定の相手が居るのなら、瑞季との接し方には注意が必要だ。
『いいえ、そんな余裕はありません』
「うふふ、そうなの。じゃあ遠慮しなくていいわね」