こじらせ処女-2
……やっぱりな。
田所さんの反応で、懸念は確信に変わった。
――この娘は、ロストバージンを撮影したいわけじゃない。
彼女のどことなく怯えたような反応は、以前も見たことがあった。
AVには「処女」というジャンルがある。
よく、○○○○処女解禁! みたいなタイトルのアレだ。
大体が処女ってのは嘘だけど、たまにガチで処女でありながらもAV女優になる娘がいる。
だけど、みんながみんな、自ら志願してデビューしたわけじゃない。
処女なのにデビューする女の子の大半は、悪い大人に騙されたり、はたまた俺みたいに借金等の家庭の事情で仕方なく……って娘ばかりだった。
そんな彼女らのデビュー作の相手となる場合も何度かあったけど、大体がみんな、田所さんと同じような反応をしていた。
そりゃそうだ、初体験なんて、ただでさえ怖いってのに、大勢の前で、明るく照らされながら、よく知らない男に身体を開かなくてはいけないのだから。
男にとっては、童貞なんて早く捨てたいものだけど、女にとっては、本当に好きな男に処女を捧げたいと考える人が大多数だと思う。
それは、AV女優でも普通の女性でも、当たり前に持つ気持ちだと思うんだ。
だけど、この業界ではそんな綺麗事など言ってられない。
好きな男じゃなくても、セックスをしなくてはいけない、それがAVなのだ。
そう頭じゃわかっているけど、ガチの処女が相手の場合は、罪悪感が込み上げてくる。
大切にしてきたものを踏みにじる、そんな気がして。
人の輪に溶け込んだ生活に慣れていた人間は、得てして人に嫌われることを恐れる奴が多い。
かくいう俺も、そんな人間の一人である。
だから、処女解禁の撮影の時は、本番前の僅かな時間を利用して、女の子とコミュニケーションを取ることにしていた。
自分のためなのか、相手のためなのかは、わからない。
ただ、そうせずにはいられなかった。