こじらせ処女-11
要は、弊社は撮影のみを行いますので、自己責任にてお願いしますってことを、いかに弊社がリスクを被らないようにまとめた内容になっている。
もちろん、うちの男優(すなわち俺)を使って撮影する場合のデータの保存についてや、性病対策なんかについても、対策は万全なはずだし、今のところ問題も起きてない。
規約が細かすぎるかもしれないが、全ては自分と会社を守るため。
だから、これで納得できないなら縁はなかったってことなのだ。
長い長い利用規約を読み終えた田所さんは、ふうっと息をついて顔を上げる。
「お疲れ様です」
「はあ、目がチカチカしました」
「色々細かく記載してしまい、申し訳ございません。ですが、大切なことですので、しっかり内容をご理解していただく必要がございます」
単なるハメ撮りに、ここまでうるさくすることで、冷やかし客を抑制できる。
逆に言えば、それでも撮影を依頼するというのであれば、客も本気だってことで。
ならばこちらも誠心誠意を持って、最高の演出をしてみせるだけ。
それが、コスタ・デル・ソルなのだ。
「それでは、利用規約にご理解を頂けた場合は、こちらの誓約書ににサインを頂きまして、契約完了となりますが……」
長い面談で、少しずつ緊張の糸が解れた田所さんの顔が若干強張った。
契約してしまえば、後戻りはできねえぞ?
そう心の中で田所さんに囁きながら、そして俺は最終確認をするよう、じっと彼女を見据えた。
一方彼女は、ゴクリと生唾を飲み込み、しばらく黙っていたが、やがて覚悟を決めたのか、ギュッと一度だけきつく目を閉じ。
そして、
「……お願いします」
と、頭を下げてから、ボールペンを握るのだった。