紫-7
寝るのが惜しくて。
もしかしたら目が覚めたら夢なんじゃないかと怖くて。
私たちはずっと眠れずにいた。
「これから先。契約の事とか。
活動場所の事とか、いろいろあると思うけど。
それはゆっくりと二人で考えていこう」
「うん」
「俺、茜さんと約束したように有名になったよ。
トップピアニストの仲間入り、だって。褒めてよ」
生意気そうにそんなことを言う。
「ピアノの先生と何が違うのか素人には分からないわ」
キスをしてそう応酬する。
奏くんは笑って
「ほんの少しの違いだけど。俺はリサイタルするんだ」
私も笑って
「ピアノの先生だって発表会をするじゃないの。生徒さんと」
私のそんな言葉に笑いながら
「なるほど。違わないな。じゃぁ、俺のリサイタルにはギャラが発生する。
これはどう?」
「ん〜。明日の朝のパン代ぐらい?」
大笑いして私にキスをした。
「もうちょっともらえる」
「スタインウエイが買えるぐらい?」
さっき仕入れた情報を得意げに披露する。