悪を切り裂く伝説の剣!!-1
「わが祖国にも伝説の剣があってね このイーブル・アイ、貴様たち日本人を厄難に導く魔の矢…ジェノサイドの最新技術を駆使した最強の武器だ!! もしかわせば、この神聖なる矢はその娘の身体を貫通することになる お前が死ぬか、娘を殺すか 二つに一つ、選ぶがいい」
プルートンは弓を弾きながら、にやりと嗤う。
「どうやら、日本の八百万の神々よりも、我がジェノサイドの野望の方がゴッドに支持されたようだな」
(くそう、日本古来の守り神より、侵略者の霊力が優る世の中ってなんだよ!? 力を貸してくれ、天照大御神、そして祖父ちゃん)
その時だ、地上からすさまじい勢いで稲妻のように火柱が立ち上った。そして、その火は人魂の様に青白い閃光を放ち、アマテラスの手に握られると、金色に輝く剣となった。
「こ、これが、草薙剣・・・あの錆びた刀が…」
草薙剣はバチバチと閃光を発しながら、悪を威嚇する様に闇に輝く。一太刀でこの世に存在する物すべてを一刀両断にすることが可能ではないかと思われる重々しい剣を前に、たじろぐプルートン。しかし、その脅威に負けじと、さらに大きく弓を引く。
「よかろう、貴様の剣が優るか、私の矢が日本国を射抜くか、勝負だ!!」
プルートンの放った矢が炎の塊となってアマテラスに迫る。その時、あの美女の声が聞こえた。
(怖気付くでない しっかと目を開いて、邪心なる矢の軌道を見極めるのじゃ)
「見える、見えるぞ 矢の足跡が…」
アマテラスは鼻先にまで迫った炎の矢をすんででかわすと、身をひるがえし草薙剣を振り下ろした。邪心なるものの放った弓矢は一太刀のもと、折れ、そして灰と消えた。
だが、まだ勝負はつかなかった。
「お、おのれ!!」
狼狽したプルートンはアマテラスを押しのけると、逆さに縛られたままの詩織を抱きかかえ、アマテラスを威嚇した。
「詩織ちゃん!」
「フフフ、勝利は正当なルールだけでは手に入らぬものだ どんな手段であろうとも生き残った者が勝者だ!!」
「糞、どこまで卑怯な奴…」
詩織の身体を盾に、アマテラスににじり寄るプルートン。
「アマテラス、構わないわ! 草薙剣でこの人を斬るのよ 今斬らなければ、日本は、帝都は…」
巨大な魔人に抱きかかえられたまま苦しそうに呻く詩織。
(今なら奴を倒せるかも知れない だけど、好きな女の子一人守れず、この先帝都を、日本を守るなんてことが出来るのかよ 教えてくれよ、天照大御神!!)
その時再び、天照大御神が囁く。
「安心いたせ…己に正義があると信じるものの一太刀は、罪なき者を傷つけることはあるまい 振り下ろすのじゃ、信義の刃を!!」
(信義の剣… 俺は、侵略者の手から日本を守りたい… 帝都を守りたい… そして友を、好きな女性を 守りたい!!)
「うおおおおおお―――――――ッ!!!」
アマテラスは草薙剣を上段に構えた。
「詩織ちゃん、俺を信じろ!! じっとしていろよ!!」
「はい!!」
詩織は祈るように静かに瞳を閉じる。
「馬鹿な!! 娘を切り刻むつもりか!?」
嘲笑と狼狽で引きつった顔の魔人の頭上に飛びのいたアマテラスは、渾身の力を込めて一太刀を食らわした。
「スネーク・クリーン・アップ――――ッ!!」
かつて、スサノオノミコトがヤマタノオロチを撃退したその剣は、盾にされた詩織の身体をするりと滑るように避け、日の国を危機に貶めたプルートンを脳天から真っ二つに切り裂いた。
「あばばばばば―――ッ!!!」
奇声を発しながら、帝都の地上へと叩きつけられる悪の権化。対照的に宙に投げ出された乙女は、新たに誕生した英雄に抱き留められるのだった。