潜入!! そして無残な敗北-1
東都新聞社会部。ジェノサイドが日本で初めてテロを起こした現場にいたにもかかわらず、その記事すらかけず、部長の逆鱗に触れた薫。それでも落胆の色を隠せず、深夜のオフィスで一人項垂れる彼にの肩を叩く李。
「しっかりしろよ、速水 あれだけのテロに巻き込まれたんだ、記事を書く気力が出なくても無理はないぜ」
「そういう問題じゃねえよ…」
「美人書店員がさらわれたっていう問題の方か?」
李はすぐに核心をついてくる。薫よりもはるかに頭の回転が速い政治部のエリート組だけの事はある。
「お前の役に立つかはわからんが… 情報筋ではジェノサイドが帝都スカイタワーの下で何かをやらかそうと画策しているらしい 俺は国会で総理に張り付かなきゃいけないんで取材する術もないが… いろんな意味で名誉挽回のチャンスかもな」
李はもう一度、項垂れる薫の肩を叩くと背を向けた。
帝都スカイタワーは地上700メートルの東洋の支柱といわれる芸術的な建造物だ。シルバークリスタルに輝く鉄柱は宝石のように光り輝いている。深夜でも光を発し続けるタワーだが、その根本からは既に人気が失せていた。
速水薫は一部、帝都の森と化したタワーのたもとに小さな地下室へと通じる入り口を見つけ、潜入を開始している。薫は一人ではない。親友の反町祐樹、そして美緒と急遽加わった岡崎教授も行動を共にしていた。
「お前らは来ないでもいいんだぜ」
「詩織ちゃんを無事に助け出すのは俺たちの仕事だろ」
「それにしても新聞記者をやっていて、帝都スカイタワーがどこにあるのか知らない奴なんているのかよ」
別に薫は祐樹たちを巻き込むつもりはなかったのだが、東洋の支柱と呼ばれる帝都ご自慢の建造物がどこに立ってるか正確に知らず、恥を忍んで2人に尋ねたわけだ。薫と祐樹のやり取りに美緒も加わる。
「私がさらわれてもそんなに一生懸命になってくれるかなぁ?」
子供の頃からの喧嘩仲間との友情は、命を懸けた潜入でも健在だ。
らせん状に組まれた階段をサーチライトのかすかな光を頼りに降りてゆく4人。
「そういえば、聞いたことがあるよ 帝都スカイタワーの地下はシェルターとなっていて、有事の際に要人を逃すいわば巨大な防空壕だと だが逆にいうとそこを壊されれば帝都の土台が揺らぐほどの大打撃を受ける東京の土台であり、心臓だともね」
「そこをジェノサイドに占拠されたと?」
岡崎の言葉を薫が問う。
「奴らがそこで何を企んでいるのか、だな それもこれも詩織君を救出せねば謎は解けまい 帝都を、日本を救うためにもな」
その時だ。鉄爪が闇を切り裂くように4人を襲う。
「お、お客様だぜ!」
「ジェノサイドの髑髏戦闘員か、骸骨スタイルのくせに生きた人間のような動きしやがって!」
薫と祐樹は相変わらず息の合ったコンビネーションで、雑兵戦闘員を粉砕していく。
「このヤロ!!」
「どりゃあ!!」
壁に叩き付けた戦闘員の顔面にエルボーを食らわし、木端微塵に砕く薫。祐樹も鉄拳を連発し、髑髏たちを粉砕する。
「きゃああ〜〜ッ!!」
鉄の爪にセーターを切り裂かれた美緒が金切声を上げる。
「美緒、大丈夫か!?」
案じるフィアンセ勇気だが、心配は御無用だ。
「大丈夫なわけ、ないでしょ!!」
悲鳴を上げながらも美緒の強烈なキンテキ蹴りが髑髏マスクの男たちに炸裂、あえなくKOしてしまった。
「お前ひとりで戦うか…?」
唖然とする薫と祐樹だ。
「おおい、光が見えるぞ!!」
岡崎の声にハッとなる2人。
「美緒、お前はここから引き返せ」
「で、でも」
露わになりかかったブラを隠しながら美緒が躊躇う。親しい詩織を助けたいという気持ちは一緒なのだ。
「大丈夫、詩織ちゃんは必ず取り返す!!」
薫と祐樹は頷き合った。