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虹色の楽譜
【女性向け 官能小説】

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-5


「俺の。記憶の中にある小野寺とはだいぶ違う。
確かに楽譜に寄り添った、昔ながらの見事なまでのテクニックだけど。
華やかに弾いてるのが分かるよ」

華やかに・・・・・

「何かが小野寺を変えたのかもしれないな」

嬉しそうに。少し悔しそうに。
そんなことを言った。

奏くんは数回弾いて、OKをもらった。
私もこのまま、帰っていいよと加藤さんに言われ
奏くんと一緒にスタジオを出た。

すっかり日も暮れて。
バイトの時間になろうとしていたので
2人は無言でお店に向かった。

素晴らしかったのに。
素敵な演奏だったのに。
そんな言葉をかける雰囲気じゃなくて。

奏くんは自分の両手をじっと眺めながら歩いていた。

何かが違う。

それがなんだかわからなくて。
なんだか怖くて
話しかけることなんか出来なかった。

コンクールに出ればいいのに。
そう言った私の言葉をどんなふうに聞いていたんだろう。

隠された奏くんの過去を思いもかけずに知ってしまった今。
なんて声を掛けたらいいのか私には分からなかった。

それでも、奏くんの音がモノトーンだなんて
微塵も思わない。
全ての色と感情を持っているかのように
私の耳に届いたその音は
専門家が聞いたら今でも白黒なんだろうか?






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