黄-4
相手が用事があるから帰るというのに。
着いて行くと言ってまで一緒にいたかったのなんて
初めてかもしれない。
「お互いにどこまで本気になるか分かりませんが。
年下の大学生じゃなくて。一人の男として、奏くんと接すると約束します」
受付嬢の。いつものスマイルじゃなくて。
なんだかこれから起こる色々な感情が楽しみになって
心から笑った。
そんな私の笑顔に安心したように
オーナーは「うん」と何度もうなづいた。
奏くんと結婚はしないと思う。
でもいいじゃない。
私はまだ24歳だもん。
急ぐことはない。
それよりも。なんだか楽しい事が待っているようで
奏くんとのお付き合いが楽しみになった。
あ・・・・
でも、まだ奏くんに付き合おうとは言われていないんだ。
「でも、私たち、まだ始まってもいないんですけど」
奏くんの演奏を聴きながらそんなことを言えば。
「え?」
とオーナーは驚いた様子。
「今日はあいつとデートだったんじゃないの?」
「そうですけど。特に何も言われてません」
「えっ。何やってんだ」
短い髪をくしゃっと持ち上げて
軽く舌打ちをして、演奏が終わった奏くんを呼び寄せた。