黄-2
「奏の演奏が変わったのはこの人のおかげかな。って
話していたところだ」
「俺の演奏が変わった?」
私の前とは違って、子供っぽい面を隠そうともしない。
このオーナーとは長い付き合いなのかな。
「自分で気が付いていないのか?」
「・・・・・」
「この人の前だと、奏の演奏は楽しそうだよ」
「・・・・・」
兄のような目で奏くんを見つめていた。
「俺はいいことだと思うよ。
奏もハタチだろ?女の子と遊びたいよな」
クッと飲んだそれはお水だろうか?
「・・・・・」
「監視するためにここで弾かせている訳じゃない」
「・・・・」
「奏。自由にして良いんだ。
お前の好きなようにしていいんだよ」
話の内容は良く分からないけど。
音が変わったのはいいことなのかな。
その後1時間ほど雑談をした後、
奏くんは再びピアノの前に座った。
「社会人、ですよね?」
「はい」
「恐らく。奏にとって初恋です」
「え・・・」
「傷つけるな、とは言いません。男と女ですから。
でも中途半端に接しないでくれますか?」