線が太い -2
「同窓会って、やっているの?」
「聞きませんね、みんな今が一番忙しい歳だから、子育てに一生懸命だし、勤めては一番大事な地位に成っていることだし。ナギさんみたいにね」
「そうね、帰りましょう、わたしの所に泊まる?」
「とんでもない、自転車で帰りますから」
優凪は、自分の心を読まれた感じがした。
それから優凪の「線が太い」と言う声を毎日聞きながら時間が過ぎていった。
夏に入った頃、
「渡辺君、一寸来て」
「どうしました、特許のことですか」
「そうではなくて、うちの製品の模造品が出たらしいの」
「中国製品ですか?韓国」
「日本製らしいの、床打ち温泉知っていますか」
「温泉旅館が、おむすび器とにぎり寿司の機械を一括買ってくれました」
「その一軒に、自動製麺器を売りに来て、置いていったそうで、旅館から、うちの製品ですかって問い合わせがあった」
「メーカーの名前が分からないのですか?」
「調べに行ってこいって、渡辺君と」
「いつです?」
「今から」
「このままですか、三日ほど戻れませんよ」
「直ぐに支度をして、出かけましょう」
優凪(やさなぎ)が車を運転して八時頃に宿に到着した。宿の主人が迎えに出て、
「大変なことをお願いしまして」
「今日は遅いですから明日ゆっくり見させていただきます」
ということで、優凪の部屋で食事をして、伸吾は自室に帰って布団に寝ころんでいると、電話が鳴った。
「渡辺君、一寸私の部屋まで来て」
「どうかしました」
「お風呂に入りたいのだけれど、なんか怖いの」
「囲いがあって、何も怖くはありませんよ」
「でも怖いから、一緒にお風呂に入って」
「係長、何を言うのです、男ですよ僕は」
「だから、頼んでいるの、早く脱いで先に行って」
「そんなこと出来ませんよ」
「してくれなかったら、私帰ってから渡辺君にレイプされそうになった、って訴えるはよ、社長に」
「強迫ですか、僕が負けるでしょうね」
「聞いてくれる? 私の願いを」
「分かりました、一緒に入りましょう、ここのお湯はぬるいですから本当に長時間一緒ですよ。そしてぼくにも条件があります」
「何よ条件って、言ってみなさいよ聞いてあげますから」
「平野優凪(やさなぎ)さん、僕と結婚してください」
「え? ・・・・・・本音で言っているの・・・・・・ハイ、宜しくお願いいたします。嬉しい・・・・・」
「ナギさん、本当だね・・・・・・嬉しいよ。先に行くよ」
「待って、伸吾さん」
「こんなにして抱いて貰えるなんて、私、幸せよ、嬉しい、胸がこんなにどきどきしてる、触って」
「僕は小学校の頃からナギさんが好きで・・・・・・・初恋・・・・・・実現した」
「プロポーズ、直ぐ裸でお風呂。よかった、洗ったげるね、・・・・・・」
「本当に女の人と関係したことがないの?」
「ないよ、ナギさんは」
「一寸だけ有るの・・・・・ごめんね・・・・・・処女じゃなくて・・・・・・・・」
「奇麗だから、中学の頃大勢の男が周りにいつも居たものね」
「伸吾さん、普通女の人がこんなにして洗っていると、固くなってくるのにどうして、私下手なのかな」
「そんなにしないで、ナギさん、変な気持ちになってきた」
男女ともお互いの大事なところを触りたいのがごく普通のことで、
「そんなに弄らないで・・・・・・おかしくなってくる」
「もっと固くなれ・・・・・・」
優凪は掌に載せてしきりに伸吾の大事な物をさすっている。そうしてゆっくりと観察をして、
「渡辺君、線が太い」
と、脈打つ物体を睨み付けた。