パンツの中-1
パンツの中
四釜康男は小学校三年生の時にこの市の市立病院へ転勤した父と母とともに三人で引っ越してきて、市立第三小学校に転校をした。
転校して一週間過ぎた日の体育の時間、脚に怪我をした康男、お腹が痛いと言う四枝冬子二人が教室に残った。
「四釜君、私本当にお腹が痛いんだから」
「どうしたの、何か悪いものを食べたの」
「そうじゃないけれど、ここが痛いの」
「ふーん」
「本当よ、パンツの中に手を入れて」
スカートをまく上げて冬子は言う。白いパンツが康男の目に入る。
「そんなことは出来なよ」
「本当だからね、ずる休み違うからね」
それから康男は冬子に顔を合わせると、パンツのことを思い出す。
中学校と高等学校と同じクラスで、クラブ活動も共に柔道部、大学は康男は医学部、冬子は美大へ進んだ。
柔道は二人とも市の警察の柔道場に通って練習を続けた。しかし康男は遠くの大学医学部に入学したので、道場で顔を合わせるのは年に数回夏休みか春休み。そうして医者となったら、休みなどが無くなって顔を合わせることが無くなった。
康男は三十六才になった春から父が勤務していた市立病院へ内科医として赴任してきた。
父と母はその前年に流行したインフルエンザで亡くなっていた。
父親は市立病院を退職して開業医であったから患者から感染したが、自分では解っていたが、患者の治療に専念して亡くなった、母も同じように感染していて父に看取られて亡くなり、後を追うようにして父も亡くなった。
葬儀の時に市長が康男のことを知り懇願して市立病院に招いた。
康男は、また柔道を始める、冬子に会い相手になったが冬子の技は延びていて康男は相手にならなかった。
「四枝冬子さん」
看護師が呼ぶ声で、康男は冬子?
「四釜君、お腹が痛いの、本当よ」
「冬子、本当か?ベッドに寝て脚を立てて」
冬子はベッドに横になるとフレアーのスカートをまくり上げ白いフルバックショーツだけになった。
「冬子お腹冷えたのではないか」
「いいから、四釜君パンツの中に手を入れて」
二人はその瞬間小学校三年生の体育の時間を思い出した。
「ここか?」
「もっと下、お臍の下のへん」
「この辺?」
「もっと下」
「冬子これから下は産婦人科だよ」
看護師がくすっと笑った。
「ガスが貯まってるんだ。便秘しているだろう」
「これで診察終わり?」
「看護師さん、CT空いているか聴いてきて」
「四釜君、結婚しているの」
「まだだよ」
「それじゃ結婚しよう」
「どうして?」
「パンツの中に手を入れたでしょう」
「それは診察のためだよ」
「でも、わたしの、触った」
冬子は康男の耳許で
「エッチな医者だ、とみんなに言うよ」
「そんなことを」
「今晩両親に挨拶しにきてね」