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虹色の楽譜
【女性向け 官能小説】

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しばらくして大きな吐く息の音とともに
演奏が終了して奏くんの手が止まった。

「び、ビックリした」

やっとのことで声が出た私に、恥ずかしそうに笑うと
「今のは指の練習曲」
今ので、練習曲?

「今日弾く予定の曲を一通りさらうから待ってて」

そう言って、再び表情を変えると
一気に静かなトーンでバックミュージックへと転身した。

お客さんの会話の邪魔にならないように。
会話が途切れた時に、少しでもこの音が会話を続けるきっかけになるように。
静かに、優雅に音が鳴り響く。

そんな時間を気がつけば1時間も過ごしていて。

あと1時間もすれば開店の時間だと言うので
私は立ちあがって帰ろうとした。

「茜さん。最後に何か1曲、好きな曲を弾くよ」
そう言って優しく笑う顔は
今まで音を支配していたような演奏者ではなくて。
今日1日、私と過ごしたハタチの青年の顔だった。

「私、ピアノの曲なんか本当に何も知らないから」



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