方向が違いますから-7
もう一つの解決法
勝美は三姉妹の末っ子、姉二人とは年齢が離れている。
「勝美さん、今空いていますね、一人フリーの人お願いできます」
「いいわよ、何番」
「七番です」
「分かった一時間ね」
「オプションなしです」
勝美は二十六才、回春マッサージ、ペペロのナンバーワンである。毎日殆ど指名客であるが、今日は指名と指名の間に一時間空きが出た。
七号室は三階である、従業員専用のエレベータは、各階の用具置き場に隠れて付いている。薄いワンピースに薄い下着、無いのと一緒だと思ったのは入店して一年ぐらい。四年目になるとあまり気にならなくなった。
「有り難う御座います、勝美です。お世話いたします」
と、客と目を合わす。オヤこの顔・・・・・
客もアレっ、という顔。
「新兄ちゃん?」
「勝美か、久しぶり、大きくなって」
「新兄ちゃんも、元気だった・・・・・座って」
「今もあの家に住んでいるんか、みんな元気?」
「姉ちゃんは、一人はフランス、一人は東京。お母さんは再婚して、出て行った」
「勝子一人、あの家に」
「そうよ、母が再婚するときに、全部私の名義にしたの。相続税たんまり払ったはよ」
「そうかオバサン再婚したのか、綺麗なオバサンだったからな」
「新兄ちゃん社長だって、オバサン元気」
「元気だけれど、入院している付属病院」
「どうしたの?」
「事故で、この間、高速で事故、新聞に写真付きで出てたろう」
「バスツアーの、それで工合は」
「骨折だから・・・・・・ただ少し肝臓が悪いと言われてね」
「マンションで一人?・・・・今日はどうしたの」
「マッサージをしてもらいに」
「マッサージ、でもここは特別だよ」
「揉んでくれるんだろう、勝子は免許取ったんか」
「学生の時にね、鍼灸マッサージーのね」
「そうか、勝子の一家は頭が良いもんな」
「裸になって、シャワーで身体洗うから」
「勝子が洗ってくれるのか」
「そうよ、普通のマッサージとは違うと言ったでしょう」
勝子は久しぶりに新兄ちゃんの肌に触れた。子供の頃は近所の子供達と、夏は裸になって追いかけっこしたり、隠れん坊をしたり、勝子はよく新兄ちゃんに抱いて貰って狭いところに隠れた。
「新兄ちゃん、大丈夫ね」
「何が、身体を洗うのに何か機械でも使うんか」
「バカネ、そんな物無いよ、ただここは・・・・」
勝子は、新一が女を知らないと思った。成り行きに任せよう。だが、新兄ちゃんが求めてきたら断れない、店の規則を破ることになる。
「どう?、私のマッサージの腕は」
「たいした物だね、気持ちが良いよ。これからここにしよう」
「もう一つ揉むところがあるの、新兄ちゃんは大丈夫かな」
「もう一つって・・・・・・まだあるのか揉むところ」
「たまたまよ」
「え? そんなところ揉むの?」
「それがこの店の売りなのよ」
「気持ちが良いね、身体に元気が湧いてきた」
「そうでしょう、・・・・・・これで終わります」
「有り難う勝子、なんか元気が出てきた」
「新兄ちゃん、これ大丈夫?」
「これ?小便すれば解決するよ」
「そこがトイレよ、行ってきなさいよ」
「本当だ、解決するんだ」
「朝はいつもだよ、勝子は女だから分からないよね」
「ネエ、新兄ちゃん、一緒に帰ろう。私早退する」
「いいよ、駅前の居酒屋で一杯やろうか」
「五郎で、いいよ、それから勝子、新兄ちゃんのマンションに泊まる」
「どうして?」
「オバサン居ないんでしょう、勝子が兄ちゃんに、もう一つの解決方法を教えてあげる」