方向が違いますから-4
見て私を
宝井良夫は高校を卒業すると、アパルトメーカーの会社に就職をした。四年間縫製、生地のカット部、デザイン室と廻って、今年から新しく部となったランジェリー部に配置換えになった。
室長として山根竜子が任命された。竜子は美大のデザイン科の研究生でいたのを社長が頼み込んできて貰
らった。女ばかりの中に良夫一人が男である。四年間各部署を廻った良夫が一番会社のことを知っているので、室長の竜子は何かと良夫を頼りにした。
会社のデザイン室から廻ってくるデザイン見本に、外部からも投稿で色々なデザインが送ってくる。
毎日、午前中はデザイン案決定の会議を開いて何種類か選んで、誰かが手直しをして仕上げて製造部へ回す。良夫は記録を取るのが主な仕事で、文面の間に自分の感想を自由に書き込んで良いというので、思ったことを書き込む。
「宝井君、男の目から見ると、こっちの方がいいんだね」
「室長、私の感想ですから」
試作品が出来上がると試着、モデルを呼んで着て貰ってみんなで批評をする。モデルは平気でみんなの前で着替える、数が多いから時間短縮なのであるが、良夫は毎回よく人前で裸になれると感心する。
スリップやペチコートなどの時は、室員の女達が遠慮無く触ったり撫でたり裾を持ち上げてみたり、したい放題をするがモデルは動かない。
しかし、ブラジャー、ショーツになるとモデルの急所を押さえたり、揉んでみたり、ショーツの股間の生地をのばしてみたり、
「もうそのぐらいで勘弁してください、おかしくなってしまいます」
モデルが悲鳴を上げる。
良夫は記録と雑用を一手に引き受ける、お茶、珈琲、ケーキの買い出し、忙しく働く。誰も彼を男性としては扱わない。モデルは一人ではない三人四人五人、試着品の量によって室長が依頼する。
「宝井君、おかしくならない、毎日女に囲まれて」
「入社してからずっとですから、慣れました」
「まさか宝井君は、男の方が駄目になった。なんてことはないはね」
「そんなことはないです」
室長はそこらのモデルやタレントなどが足元にも及ばない美人で背も高くスタイルも良い。二人だけだとこの方が危ない、良夫は身体を引く。
「最近は、若い子も男の目を向けようと、下着は過激な物を好むようになっているそうよ」
山根室長は就任して一年ぐらい過ぎたときに朝の会議で、製品の傾向を少しエッチの方に向けようと提案した。
「みんなショーツはどんなのを穿いているの、私は今日は白フルバック」
と、スカートをまくり上げる。良夫の目に眩しく股間が見える。女性は全員スカートをめくり、パンツを降ろして見せ合う。
「宝井君は」
「僕もですか」
「ブリーフなんだ。触らして」
女性は一斉に遠慮無く触ってくる、ある者はわざと股間を握って意味ありげな笑いをする。散々な目に遭わされた。
「宝井君が可哀相だから、もう止めなさい」
山根室長が止めに入らなければ何処までエスカレートするか、女の集団は恐ろしい、ズボンを穿きながら良夫は思った。
室員が色々なデザインを書いて生地を決めて会議に出した。外部からの投稿も多数あった。二十点ほどパンティーとブラジャーを試作することにした。
「凄いことを考えたんだね山根室長」
「これは製造部長ご自身で持ってきていただいて」
「試着の日は是非僕も呼んで下さい。誰か穿いてみるか?」
「とんでもない、これは彼氏だけに穿いて見せるのですよ」
「モデルさん穿けるかな」
試着の日は社長、副社長、販売部長、製造部長、デザイン室長が参加した。デザイン室長は女性である。
モデルは五人、それに室長がどう手を回したのか風俗嬢が五人、製品を手にして少し驚いた。
良夫は久しぶりに上気した。慣れてしまってはいたがさすがにこの度は刺激が強かった。
「本当に穿いているの?」
「穿いてますよ、生地が薄いから穿き心地はとても宜しいです」
モデル達には好評であった。着用した試作品はモデル達に上げて、試着会は終了した。いつもより時間が掛かって外は暗くなっていた。
片付けの最後は良夫の係であるから、片付け終わったら彼一人であった。
ほてる身体で部屋に戻ると室長が一人残っていた。
「ご苦労さん室井君。若い男性には一寸刺激が強かったかな」
「ハイ、強かったです」
「これから一寸付いてきてくれますか、都合がある?」
マンションの駐車場に車を止めた。
「室長さんのマンションですか」
「お願いしたいことがあるの、付いてきて」
「室井君、ズボンを脱いで・・・・・・・・」
「やっぱり男も濡れるんだ。室井君、見て私を」
良夫の目の前に真っ赤なシースルーの股間があった。
「私もくすねちゃった。穿き心地がいいよ、・・・・・・もっと見て私を」