アパートの鍵、貸します-10
汗ばんだ裸の若い男女が、並んで天井を見ながらベッドに転がっている。
「ふう、すっきりした。やっぱ三回はヤんないとね。麻里ちゃんもよかったでしょ?」
「ぅ……ん……」
「はは、まともに返事もできないほどイきまくっちゃった? ほんと、感度いいねー」
流はにっこり笑うと、横を向いて麻里の身体にぎゅっと抱きついた。
「ま、いいや。麻里ちゃんすっげーいいカラダしてるし、俺ともかなり相性よさげだからさ、
またヤろーよ、こんな風に。ずんずん」
「う、うん、でも……」
「……もしかして、まだなんか気になってる?」
「……」
無言のまま、麻里が小さく頷く。
「他の男とか?」
「……」
また、首肯。
「へー、そんなのいたんだ。どんな奴?」
「ゼミが一緒でよく話すの。音楽や映画の趣味が合って、おすすめにもハズレがなくて……」
(なっ……!)
カーテンの裏で黙ったままうつむいていた智哉の顔が、一瞬びくんと跳ね上がった。
「ふーん」
流は素っ気ない返事をすると、さらに続ける。
「でもさ、そいつ麻里ちゃんに好きだって言ったわけじゃないんでしょ?」
「え? う、うん」
「ゼミが一緒でよく話して趣味も合うのに何も言わないってことはさ、つまりただの友達って
ことだよね?」
「そ、それは、そうかもしれないけど……」
困ったように視線を泳がせる麻里を、流は腕に力を込めて胸の中へと引き寄せた。
「だったらさ、いいじゃん。そんなよく分かんない奴のことより、俺は麻里ちゃんが好きで、
麻里ちゃんは今俺とこうしてるってことの方がよっぽど重要だよ」
「で、でも……流くん、他にも……」
「だーいじょぶだいじょぶ。前にも言った通り、他の女は全部切るって。絶対。約束」
「本当に絶対……約束?」
「うん、絶対に約束」
「うん……なら……いい」