ずん田もち夫、誕生-3
しかし。
「あ、あれ……?」
這わせた指先の滑りが悪い。
カヨはクスクス笑いながら、
「濡れてないのにそんなにしたら痛いわよ」
と、俺の頬にキスをする。
そう、カヨのヴァギナは俺を受け入れていなかったのだ。
おかしい。
今まで関係を持った女は、驚くほど反応がよくて、俺が少し指や舌を動かすだけで、艶かしい嬌声をあげていたのに。
動揺を見破ったカヨは、ショーツに入れた俺の手をそっと取ると、
「やっぱりお子ちゃまは、テクニックはまだまだみたい」
そう言い、目配せするようにおっさんに微笑んだ。
あちこちでクッと小さく漏れる笑い声。
惨めなことこの上なく、俺は下唇を噛み締めることしかできなかった。
「仕方ねえな。それじゃあ……津田」
「はい」
おっさんに「津田」と呼ばれた男は、他でもない、先ほどのレクサスで、ビシッと決めたスーツのネクタイを緩めながら、カヨが座るソファーに近付いた。
俺の隣に来た津田は、小さく「どけ」とだけ言うと、カヨの前に対峙する。
居場所が無くなった俺を、おっさんがニコニコ笑いながら手招きした。
「御代田の息子、ええと名前は……」
「……光司です」
「年は?」
「18歳」
「ふん、のびしろはあるってこったな」
……何だよ、意味わかんねえ。
おっさんが座る椅子の横に並ぶように立った俺は、ヤクザの事務所にいる恐怖よりも、カヨにバカにされた怒りが勝って、おっさんの問いにもつっけんどんに答えていた。
おっさんも、俺の態度に腹を立てるわけでもなく、いやむしろ、それを気に入ったような下卑た笑みで、再び黄色い歯を覗かせながら、
「いいか、津田がどうやって女を抱くのか、しっかり見てろよ」
と、いつの間にか取り出した煙草に火を点けた。