リリア語り(11)-1
お姉さまのお話では、もうずっと以前、オイオでドリーさまと共同入浴した際、ドリーさまはお姉さまの胸をちらちら見ていたと、そういうことでした。
「あのときの目は‥‥そうだ、わたしがおまえを見ていた目と、きっと同じなのだ‥‥。あのときから、わたしはあの子を迷わせてしまたとかもしれない‥‥」
わたしが苦笑していると、お姉さまはその迷わせてしまった豊かな胸に腕を組み、
「そういえば、あのあと、ドリーは何かウズウズしたように、胸や尻――腰を振っていたな。変だなと思っていたのだが――そうか、あのときのあれがまずかったのか‥‥」
とつぶやいておりました。
ドリーさまのためにも、罪作りなお姉さまに、わたしはひとこと言ってあげようと、口を開きました。
「もう‥‥お姉さまったら‥‥罪作りですわね――‥‥ふ、ふふふっ」
わたしが最後に笑ったのは、そのとき姉さまが、わたしの
「お姉さまったら‥‥。こういうに、あの方たちも手なずけているんですの? ‥‥特にあの子――あふン‥‥っ!」
わたしがジャニスさまとドリーさま、特にドリーさまを念頭においてそう言うと、
「う、う、うるさいっ」
とお姉さまは急に、わたしの右乳房を揉んできたのでした。わたしが負けじと、
「うふっ。これが答ですね――ああンッ、もう、お姉さまったら――!」
と言い返すと、姉さまはすかさず、両手でモミモミしてくるじゃありませんか!
「なんのかんのと言って、こうやりたいだけではありませんか」
「――――‥‥」
お姉さまが、困ったお顔をされたので、わたしは言い添えてあげました。
「でも、そういうお姉さまが好きですわ」
お姉さまは、ホッとしたお顔になりました。それからわたしたち姉妹はまた、少しのあいだ乳繰り合ったのでございますが、真面目なお話も、少しはいたしました。
「本当は、わたしもあの方と結ばれたいのですよ、お姉さま‥‥」
「――なら、やはりおまえが――‥‥」
わたしだって、あの調教士さまに、毎日おっぱいを舐められたいです。お姉さまだから、お譲りするのです‥‥。
「お姉さまと結ばれるほうがあの方のため、また皆のため、そして木星圏のためと思うからです。よくお考えになって。スガーニー王室付きとはいえ、わたしは一メイドにすぎません。でも、お姉さまは違います。他の方に聞いても、大同小異の答が帰ってくると思いますよ」
「わたしと結ばれることのほうが、あいつに重荷を背負わせることになると思うが‥‥」
「それは、あの方がお決めになること‥‥」
そう言ってわたしは、あることに思い当たりました。
「もしかしたら、お姉さまは、怖いのですか? あの方が重荷を前に、この木星圏から立ち去り、元の世界へ戻ってしまうのではないかと‥‥」
「‥‥‥‥」
これは、お姉さまには酷だったかもしれません。そして、そんなことをわたしが言っても、何がどうなるわけでもありません。わたしは、自分に関わる以外の、よけいなことは頭から追い払うことにいたしました。
「わたしにも、やってみたいことがあるのです‥‥」
そして、自分の欲望であり、同時にこれを見ることで、もしかしたらあの調教士さまのお心が慰められ、またお姉さまの覚悟をお知りになり、お姉さまと結ばれ、この星系へ残ろうというお気持ちになるのでは――その一助になるのではと思うことを、お話ししたのでした。
それは、コンジャンクションで最後に見た、あの胸合わせ、です。
「そ、それはいいが‥‥。その、誰と、するんだ?」
わたしがそれを言うとお姉さまは、とぼけておられるのか、それとも本来の鈍さなのか、真顔でわたしにお尋ねになりました。
(――もうっ)
わたしは、笑顔を作り、申し渡したのでございました。
「もちろん、お姉さまと、です」
お姉さまは、目を丸くしておられました‥‥。
――それからまた、わたしたち姉妹はいろいろお話をしたのですが、ルリア姉さまは最後に、来たる正式な条約の調印式に向けて、ある覚悟をお話しされたのでございます。真の和平のため、と――。
「まあ‥‥。凄い――」
わたしは、息を飲みました。きっと、さきほどのお姉さまと同じように、目を丸くしていたと思います。
「さすが、お姉さま‥‥」
わたしは心からそう思い、わが姉ルリアに、深く頭を垂れたのでした。