痛みと悦び-2
「そうですか……ね?」
「詮索したくないなら、そう願うしかないだろう?」
ジルに根掘り葉堀り聞いておせっかいしたいなら別だが。
「そうです、ね。出来る事、やります」
「ふむ……リョウツゥはその銀の民が好きなんだな?」
ニヤリと笑ったヴェルメの言葉にリョウツゥは一気に赤くなる。
「好、す、スっ??!!!」
「なんだ?違うのか?違う事ないだろう?」
リョウツゥは湯気の出る顔を覆ってテーブルに突っ伏した。
「……好き、とは違うと、思います……ただ、その……お話は、し易いです」
ジルはリョウツゥが飛べないからといって蔑んだりしない。
何をするにも遅いリョウツゥをジッと待っていてくれる。
それはバインも、ヴェルメやキアノも同じだが、3人は何だか親みたいに見守ってくれている感じだ。
ジルは、何というかリョウツゥにとって、とても居心地が良い。
「青の民的に言えば『水が合う』と言う事だろうな」
生きるのに必要な水の種類が同じ。
それは青の民には相方を決める上で最も重要な事だ。
自分は海水が良いのに相手が真水、となるとデートもままならない。
「好きかどうかは置いておいてだ、そういう相手は貴重だと思う。大事にすると良い」
「……はぃ……」
リョウツゥはテーブルに突っ伏したまま返事をし、傷だらけの狐が少しでも休まるにはどうすれば良いか考え始めた。
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(あ゛〜……疲れた……)
一晩中城内を探索していたジルは、疲労困憊の身体を引きずるようにしてアパートへの道を歩いていた。
夜の城内を探索、様々な資料を読み漁りカウル=レウム王の秘密を探ってみたが収穫無し。
半年近くかけて調べ尽くしたが何も分からなかった。
ただ、城の間取りや秘密通路などは網羅出来たので良しとする。
(本人に近づくしか無いか……)
これ以上、夜の探索をしても意味がなさそうだし、何とかして直接カウル=レウム王に近づく必要がある。
ジルは自分の尻尾を掴み、先の方を確認した。
先っぽがまだ黒かったがアパートに戻る頃には元に戻っている筈だ。
ジルの鮮やかな青い体毛は目立つので、夜行動する時は体毛の色を変える薬を飲んでいる。