第一話-10
下着から引き出した少年の牡を、熱い吐息を伴い佐伯が口に含んだ。一旦根元まで咥えこみ舌と上あごで挟むと、扱くように数回、ゆっくりと上下に頭を動かす。
孝顕の唇から吐息が漏れた。身体の中心に熱が集まり始める。
少年の状態を窺いながら、牡をじっとりとしゃぶり回していた佐伯の頭が、再び上下動を開始する。濡れた音が控えめに響き始めた。
亀頭周辺から鈴口にかけて細かい皴までを丁寧に舌先でなぞられ、孝顕は堪え切れずに掠れた声を上げる。変声期を迎えていない自分の声が、善がる女のようで嫌だった。思わず歯噛みする。
自分の意識とは無関係に反応し、猛っていくそれが孝顕には許せなかった。玩ばれている部分を、今すぐ根元から切り落としてしまいたかった。いっその事、自分の存在ごと消し去りたい。せめて意識だけでも、この行為が終るまでの間だけでいい……。
混濁していく意識の中で、少年は強く願った。
与えられる感覚がはっきりと変わっている事に気がつき、孝顕はきつく閉じていた目蓋を開けた。目に飛び込んでくる蛍光灯の光に、思わず目を細める。
途中で意識が完全に飛んでいたようだった。時間間隔があやふやだ。視界の下端に、自分の上でいやらしく腰をうねらせている佐伯が映る。
孝顕はここにきて、やっと視線を動かした。
スーツのスカートを腰までたくし上げた教師が彼に跨り、熱い吐息を零しては仰け反っていた。結合部は淫液に塗れ、彼女の媚肉が孝顕の牡を呑み込んでは吐き出す。赤く上気した頬に弛緩した口元、色欲に濁る瞳は虚ろに空を見つめる。
乱れる佐伯の姿を目にしても、孝顕は不思議と何も感じなかった。頭のどこかが完全に麻痺しているらしい。
場所は第二講義室。自分は今、床の上で彼女に組み敷かれている。
最低限の状況確認をすると、思った以上に冷静な自分に満足した。
ここは書斎ではないしあの人もいない。大丈夫、自分の意識はちゃんと現実に戻っている。底冷えのする黒い瞳に己の痴態を見つめられるより、目の前の女のほうがましだ。
肉がぶつかり合う音に混じって粘ついた擦過音が聞こえた。佐伯の喘ぎが次第に大きくなっていく。
もうすぐ限界が来る。
開放したいともがいている。
頂点を目指して駆け上がる身体とは逆に、少年自身は急速に気分が悪くなっていった。心臓から始まった悪寒が、波紋のように全身へ広がる。
早く──。
早く終われ。
ほんの僅か、ぴくりと腕が反応した。
自分の意志が身体を動かす事に気づき、淫靡に踊る佐伯に手を回した。たっぷりとした腰を両手で掴み、力任せに己を突き上げる。
突然の事に彼女が驚いて声を上げたが、お構い無しに激しく腰を打ち付けた。
気持ち悪い。
吐き気がする。
早く。
一分でも、一秒でも早く──。
終らせる事だけを考え、少年は佐伯を揺らし続けた。