絶望のKISS-5
「柊さんさぁー、気になってる男子が居るでしょ?」
「えっ!何ですか、いきなり。」
夕陽が光る中、一緒に帰ろうって言ったのに、何故か人気のない庭へ連れられ。
「答えて、居るんでしょ?…いや、正式には居たんだっけ?」
「!!」
先輩の妙に曲がった口調、私は直感で彼の事だと悟り。
「どうして、それを。」
「さぁね、運命の悪戯って奴?」
「……。」
どんどん口調が鋭くなっていく、普段素敵なお姉さんみたいな感じが…。
「彼が付き合って居る相手って、まさか。」
「そうだけど、何か?」
「……。」
合唱部の間でも噂があったけど、本当に。
「……確かに、気にはなってました、此間だって一緒に水族館に行って、告白を…。」
「……。」
「あっ!で、でもっあれはデートじゃありません、本当なら他に友達を連れて、告白だってした後から、彼に聞いて。」
「それで?」
「それで、私はフラれて。」
「その後は?」
「最初はショックでしたが、もう…キッパリ諦めました、私何かよりもっと良い人が居るんだって。」
「…じゃー、もう未練はない訳ね?」
「は、はいっ!」
何だろう、ドンドン空気が重くなってきた。
「嘘言わないでよっ!!」
「!?せ、先輩?!」
「私、聞いちゃったんだから、貴女が諦めて居るフリして実はまだ心の奥底で未練を抱いている事を。」
「!!」
不意に昨日のモスドでの事を思い返す。
「確かに、私は…で、でもっ!これからはただの友達として断ち切れるように。」
あれ、この気持ち誰かから聞いたような。
「…あれから彼、妙にぎこちないの、私と付き合うのに変に躊躇って…。」
「……佐伯君が?」
「アンタのせいよ!アンタが素直に断ち切れず、ウジウジと彼の周りを付きまとうから」
「私は、別に。」
「……兎に角、もう彼には付きまとはないで…それを言いたくて呼び出したんだから。」
「……。」
私は、別に。