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笛の音
【父娘相姦 官能小説】

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笛の音 4.-20

 つまりもう、こいつは終わりだ。信也が常々切り札として持ち出していた愛美の名も無視した有紗は、襞壁が直樹に擦られるリズムに合わせて、甘く愛しみの声を漏らして腰を振り続けた。
「おお……、やめろ……、やめてくれぇ……」
 泣いている。芝居の中の姉の面影にまみえて嬉泣した時と同じくらい、気色悪い哀哭を上げていた。「……お前、親に対して……、なんてことを……」
 その言葉に直樹が少し怯んだ。視界の外の信也を窺う。
「だめ……」
 なんて優しい人なのだろう。殺意さえ覚えた相手なのに、「親だから」という言葉に良心が揺さぶられたらしい。大丈夫だ。そもそも、全く気にしなくていい。
「……あんたなんか、親じゃない」
 顔も向けずに、今まで何度となく言ってきたことを改めて告げた。「あんたなんか、絶対」
「有紗っ……!」
「言っとくけど――」
 漸く、有紗は直樹の首に巻き付いたままソファに縛られた信也へ顔を向けた。頬が紅潮し、愉楽に惚けて潤った瞳。今まで見せたことのない、信也には全く得難い婉容だった。「――私は、お母さんでもない。お母さんはね、もう、いないの」
「ちがうっ! お前は、生まれ変わりだ。……お、お姉ちゃんのぉ……」
「お母さんは、死んだ。でも……、きっと、生きてる時は、お父さんにいっぱい愛されて幸せだったと思う。……っ、……今の私みたいに」
 こうしていると、父と母が愛し合う姿を思い浮かべても気恥ずかしさはなかった。自分自身が、そして愛美が、この獣が全く介在しないところで果たされた、父母の愛の顛末なのだから。
「おおっ……、おおぉ……」
 慟哭。獣はもう失意の遠吠えを上げることしかできなかった。
「……直樹」
「ん……」
「なんか……、……いつもより興奮してる。私」
「……。……」
 じっと見つめた。「……俺、も」
 有紗は朗らかな笑みを浮かべて、
「――じゃ、見せつけて? 私のこと自由にできるの、直樹だけなんだから」
 そう言うと、動きに合わせて直樹が腰を突き上げてくる。淫らな言葉を口走って、自分を淫具として扱っていいから、もっと直樹が劣情をぶつけてくるように求めた。夢想した父母のように、これから直樹と時間を分かち合うのだ。十七歳で止まっていた時計が動き始めた。あのまま付き合っていても、やがて本当に直樹よりも素敵な男が現れたかもしれないし、直樹が浮気を働いたかもしれない。あるいは派手な波風は立たなくても、お互いの気持ちが冷めて終わったのかもしれない。
 だがそれは今日以降でも、同じことだ。この愛は必ず成就するとは限らない――。
 むしろそれがいい。結局誰がいつ、笛を吹いたのか分からなかった。鳴ったのかどうかすら定かではない。彼の愛惜とともに、尊い別離の危うさも一緒に手に入れたことが嬉しかった。有紗は直樹が自分のものではなくなる危惧に、これからも身構えていくつもりだった。





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