底辺からの出発-7
「いえ、童貞ではない……ですけど……」
「なら問題ねえだろ。それともカヨじゃ不満か?」
言われて、こっそり「カヨ」と呼ばれた女を見る。
やや赤みの強かった唇は、さっきのキスで口紅が取れかけて、それがやたら扇情的に見えた。
今まで俺が関係を持った女は同年代ばかりの奴ばかり。
それでも彼女らは可愛かったし、セックスも楽しかった。
でも、カヨを目の前にしたら、彼女らとのセックスすら霞んで見える。
それほどまで、カヨの色気は凄まじかった。
「ね、あたしじゃイヤかしら?」
しびれを切らしたように、カヨが再び俺の身体に腕を回す。
まるで、獲物に絡み付く蛇のように。
甘ったるい香水の匂いが、まるで媚薬のように俺を狂わせていく。
赤系の、綺麗なグラデーションで飾られたネイルで唇を、頬をなぞりながら上目遣いで俺を見る。
イヤなわけねえだろ。こんないい女とヤれるなんて願ったり叶ったりだ。
――だけど。
カヨに翻弄される俺を、おっさんが、手下共が、ニヤニヤ見てる前でヤる度胸なんてあるわきゃねえ。
「や、やめ……」
「ね、楽しみましょう?」
片手で俺の身体をまさぐりながら、もう一方の手でスーツのジャケットを、スカートを、脱いでいくカヨ。
床に脱ぎ捨てられたジャケットのタグが、クソ高いブランドのロゴなのが、やけに目に焼き付いた。
あれよあれよと言う間にブラジャーとショーツだけになったカヨの姿を見て、反射的に喉が鳴った。
細い身体からはあまり気付かなかったが、露になったバストは、俺の手でもこぼれそうなくらいボリュームがある。
それだけじゃない、くびれたウエストに縦長のへそ。
そして面積の小さなショーツからうっすら透けて見えるアンダーヘア。
顔だけじゃなく、スタイルも完璧なカヨの誘惑に堕ちるのは、もはや時間の問題だった。