投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

浅くゆるやかに
【若奥さん 官能小説】

浅くゆるやかにの最初へ 浅くゆるやかに 0 浅くゆるやかに 2 浅くゆるやかにの最後へ

浅くゆるやかに-1

思わず噴出しそうになった。
昨夜のコーヒーがわずかだけ飲みのこされたままのカップの位置も無造作に置き放たれた爪きりも。
テーブルの上のすべての物に細心の注意を払って動かす事のないよう、そっと開いた液晶画面はどこかの海に沈む夕日を映し出していた。

私は現在、妊娠8ヶ月。もうすぐ母になるという気分にもう半年ぐらいずっと囚われている身だった。
そのせいでおなかがちょうどバレーボールほどにも膨れてきて、一番びっくりした事はリアルにデベソというものを身を持ってして見てしまったこと・・・
えっ!?そんな事はこの際どうでもいい。
なにがそんなに愉快なのかといえば、夫のパスワードを解読してしまった事だった。

うちにはパソコンが一台しかない。
私はそう使う事がないのでそれで構わないのだけど、パソコンというものは便利なもので一台のパソコンでも複数の人が共有できるようになっている。
その際にはあらかじめ自分で作ったパスワードを入力する事で使い分けたりするのだけど、そのパスワードが分からなければ他者のページには入れないわけだ。

これを「老婆心」というのだろうか?
これからママになるというのに早くも老婆では困るのだけど、ちょっと興味本位で夫のパソコン画面を探ってみようかといろいろ試してみた。
本音からいうと、もう半年近くも事実セックスレスが続いていた。
最初の頃はつわりが酷く、とてもそんな気分にはなれなかった。

また、圧迫流産とかそんな心配までして…

それは事実だ。

だけど私という女は根本的にスケベで少し落ち着いてくると、もう欲しくてたまらなかったのだ。
だけどセックスレスは何も私だけという事はないはず。
夫だって妊婦でもないのに半年近くもセックスレスという図式が成り立つハズ・・・よね?
それでエッチな動画のひとつも隠し持っていないかとヒマを持て余して探ってみたのだった。

あぁ、やっと繋がった。

友人や親兄弟からもよく言われる事なんだけど、私の話は支離滅裂なのだそうだ。
本人はちゃんと話してるつもりなのだけど、いきなり話が飛んで聞いてる側にすれば何の話なんだかよく分からないという。


それでそのパスワードなんだけど、誕生日 車のナンバー そんな単純ではないだろうな。
見かけによらず案外、頭のいい人だからそう簡単にはいかないだろう。
そして私の名前。
残念ながらこれも違った。そこで思い出した事だけど、夫はなぜかローマ字入力なのだ。
何でわざわざそんな面倒くさい事?

一度訊いてみたけど入力を早くするために最初にそう習ったとか言っていた。
で、速いか?というとたぶん並だろう。
私は現在、一応産休をとってる状態だけど、会社で普通にパソコンを使う私の方が夫よりもはるかに入力が速いと思うのだ。
男性はこうした機械を扱う事に関しては、なぜか女に負けをとる事を嫌がる傾向がある。

そう、そんなだから私は帰宅してまでキーボードを見たくもない。
それがうちにはパソコンが一台あれば十分という理由のひとつでもあった。

あぁ、また話がソレちゃったけどローマ字で「ATUKO」私の名前。
これが夫のパスワードだったのだ。
不覚にもかなり嬉しかったりする。それと同時にちょっと心が痛む。



浅くゆるやかにの最初へ 浅くゆるやかに 0 浅くゆるやかに 2 浅くゆるやかにの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前