笛の音 3.-37
「あ……、……あ。……な、……う」
口唇と頬を震わせて、寸出まで出かかっている名前――。それを失うくらいなら。有紗は涙を流して唇の形を、ナ行からサ行に変えると、
「し、信ちゃんの……、お、おちん、ちん、く、ください……」
と言った。
「おおっ……、有紗、やっとぉ、自分で言ってくれたねぇ……」
信也は恍惚の表情で亀頭を有紗の入口に押し付けると、「おいっ、瑠依子見てみろぉ……。今から有紗とセックスするぞぉ、……そうだな? 有紗」
立ち上がった瑠依子が舌打ちをして、まさに繋がらんとする信也たちの傍に立ち、肘掛けに手をついた。
「……う、うん……、し、信、……ちゃんと……、する」
献身的にクンニリングスをしていたのに、また塵芥扱いされた瑠依子が、有紗への虐意を催して、
「ね、あんたたちって、実は本当に、父娘なんでしょ? お父さんプレイとかじゃなくて、ホントにさ」
「ち、ちが……」
「そうだ。瑠依子。……有紗は俺の可愛い可愛い娘だぞっ!」
有紗の否定を退けて、信也は一気に最深部まで男茎を打ち付けてきた。瑠依子の舌で絶頂を味わったとはいえ、媚薬を塗られて焦らされ続けた襞壁を擦られたのは初めてだった。下半身が無くなってしまったかのような衝撃に、声にもならない叫びを上げた有紗は、打ち込まれた信也の男茎を搾って、瑠依子の時とは雲泥の絶頂に達していた。
「あはっ、マジぃ? あんたいきなりイッてんじゃんっ。パパにハメてもらってさぁ……。きっもい。頭おかしいんじゃないのっ」
「お、おかしくはないぞう……。お、俺たちは、ずっとこうして愛し合ってきたんだからなぁっ」
信也が男茎を引き始める。愛し合っていない。愛し合ってなんかいない。そう言わなければ認めたことになるのに、引き抜かれていく間、過呼吸になって胸が震えた有紗は何も言えなかった。
「ほら、有紗。もっとだろ? 『有紗のオマンコ、ジュボジュボして』ってお願いしなさい」
「う……」
男茎を入口付近まで引かれ、動きを止められると、有紗に言葉を発する余裕が生まれた。お前なんかと愛し合っているわけがない、そう言わなければならないのに、次の打突を待って収縮する通り道が有紗にそれを遮らせ、「……あ、有紗の、……オマンコ、ジュ、ボ……、ジュボして……」
脳髄に直樹の姿がフラッシュバックした。だが次の瞬間ドンッという衝撃とともに体が広げられて霞んでいく。
「はあっ……、ふうっ……、も、もうひとつ……」
腰を引きながら、今度は信也自身がこれから言う命令に興奮で息を詰まらせて、「あ……、あっ……、『亜紀お姉ちゃんの、オ、オマンコ、ジュボジュボ』っ、もだっ……」
第二の命令には有紗は首を振った。亜紀ぃ? 誰それぇ? そう言った瑠依子は全く無視されて、
「瑠依子っ、ボストンバッグ、こっちに持って来いっ」
口を尖らせた瑠依子が、ベッドから持ってきたボストンバッグの口を開くと、信也は片手で中を探り、スポイトの尾のようなゴムを取り出す。
「ほら、有紗どうしたっ」
指で摘んで空気をゴム内から追い出した口を、男茎が貫いているすぐ上で勃突したクリトリスに押し当てると手を離した。
「んんっ!」
クリキャップは、圧力差で有紗の敏感に研ぎ澄まされた雛先をその中に引っ張りあげた。未経験の感覚に有紗はビクビクと体を跳ねさせるが、キャップはまるで意志をもっているかのように、意地悪く絶妙に有紗を絶頂ギリギリで押しとどめさせる程度にクリトリスへ吸い付いてくる。
「ほらっ、イカせてほしいんだろ? 言ったら突いてやるぞっ」
信也が指で有紗の股間に立ったクリキャップを弾くと、クリトリスが引っ張られて、埋められた男茎を媚肉で搾ってしまう。この男に取っては自分は、母の代わりの性玩でしかない。前原……、いや、金谷有紗が欲しいわけではないのだ。
「……あ、亜紀……、お姉ちゃんの」
お父さんだけじゃない、お母さんも死ななければこんな目に合うことはなかった――「オ、オマンコ、ジュ……、ジュボジュボ……、ううっ」
嗚咽に濁った有紗のセリフを最後まで聞けずに、信也が勝鬨を上げて男茎を打ち付けた。クリキャップのヘッドが揺れる。悲鳴を上げながら屈辱の絶頂をきたす有紗を何度も何度も愉しんでくる。七年間で最高の征服感に、毒汁を子宮に注ぎ込んでも、少し腰を揺らすだけですぐに男茎が回復した。
「くっ……、有紗。お前は本当は、お父さんのおちんちんが好きなんだ」
催眠を掛けるかのような声色で腰を打ちつけながら信也が囁いてきた。
「す、好きなんかじゃない……」
これではない。今は仕方ないだけだ。決してこれではない。私を私として愛してくれるのは直樹だけだ。有紗が必死に首を横に振る耳元で更に、
「……愛美のことを守るために、お父さんとセックスしてる……、なんて、ウソなんだろ、有紗ぁ? お前はお父さんとのセックスが大好きなんだ。ん? そうだろ? お前はなぁ……」