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闘犬
【その他 官能小説】

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花鳥風月-1

3ヶ月が過ぎた。一秋は見事に京都の大学を合格をした。

あの日、あの夜、一秋は思った。自分が初めて知った女性が昔からの意中の女性であり、壁を隔てた様な空間で生活している、『このままでは受験を失敗する。』自分を制御する事など出来ないと。菜穂子とのデートの約束を励みにして、同時にそれを諦めて全てを受験に集中させる事にした。
結果、難関大学に合格し、進路を切り開いた。しかし、男としての何かを放棄した様にも思えていた。

桜の花がつぼみ出し、春を感じさせた。

「じゃあ、これで最後だね。」
「いままでご苦労様。」一秋の母がトイレの汲み取りのおじさんに挨拶をした。下水道が通ったため、水洗トイレへ工事が始まる。見ていた一秋は何か寂しい感じがした。

「おじさん、いままでありがとうね。」隣から菜穂子の声がした。緑のホースがバキュームカーから菜穂子の家に伸び、ブルンッと何度も暴れた。
「ご苦労様、本当にありがとうございました。」菜穂子は丁寧に挨拶していた。一秋は小さい頃、初枝と揺れるホースを飛び越えて遊んだ事を思い出した。

「あっ、かずちゃん。休み?」
「はい、もう春休みみたいな感じです。」
「ふーん。いつ京都に行くの?」
「卒業式が終わって、月末に行きます。最初は寮に入るんで、あまり準備も無いんです。」
「なんか寂しくなるね。」うつむいた菜穂子の目から涙が溢れそうだった。
「毎月帰ってくる様に母から言われてるので、ちょこちょこ帰っては来るんですけど、何しろ新天地ですから・・・。」
「そうね。しっかり勉強しなくちゃね。」
「しばらくは勉強は遠慮です。受験で大変だったので・・・。・・・おばさん・・約束守れなくてごめんなさい。」一秋はあの日の事に触れてみた。
「えっ、何言ってるの?まだ約束したままよ。違うの?」
「えっ?あっ、はい。」一秋は驚いた。自分の態度で菜穂子を怒らせ、全て終わったと思っていた。強引に言聞かせて出来ない心の整理をしたのに、菜穂子の言葉はあまりにも意外であった。
「いつでもいいわよ。」そう言って菜穂子は家に入っていった。

この夜、一秋は久しぶりにあのビデオを見た。
『やっぱり好きだ。』一秋は涙を流した。胸が苦しくなる。どうにも出来ない思いである事は理解出来ている。『せつない。やりきれない。』悩んだ。悩んで悩んで、さらに悩んだ。
菜穂子もOKしているのに、でも、相手は人妻・・いや、ビデオでセックスも見ている・・・でも女性としての・・・・駄目だ、もっと辛くなる。今でもこんな苦しいのに・・・・??女性が解らない!

東京の桜の開花宣言がニュースで報道された日、苦しい胸の内の全てを菜穂子に正直に伝える事にした。このまま何もせず京都に行く事を考えていた。

「こんにちは、おばさん。」
「かずちゃん、来てくれたの。」
「おじさんは?」
「大丈夫。心配しないで!」
「あの・・・」
「いいから上がって!待ってたの。」
「ちょっ、あのー・・・」

菜穂子は忘れられないほどのテクニックを一秋に施し、一秋は決して記憶から消す事の出来ない快感を感じながら菜穂子の中に果てていった。それは一秋にとって、人を思いやる事の大切さを教え、どれほどか少年を大きく大人にし成長させていった。


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